さて、ここまでの工作、どれくらい時間がかかろうか。海岸に到着してから10分、ドアを破壊して進入に10分、爆弾設置に10分、ドラム缶奪取に10分、ドラム缶搬出に20分くらいのものか。だとしたら、1時間くらい、多めに見積もって2時間くらいあれば可能ということになろう。この工作のすべてがうまくいけば、原発は機能不全に陥り、「冷やす」ことが全く不可能になる。制御棒まで破壊していたら「止める」こともできなくなる。水素爆発、水蒸気爆発が起こり、原子炉の上ぶた、建屋が吹き飛ぶ。原子炉の「封じ込め」は完全にできなくなる。同時に閉じ込められていた放射性物質が、思う存分に放出され、地域一帯どころか、西日本全体を存分に汚染することになろう。それ以降、世紀単位で隔離しなくてはいけない土地が生まれることになるのである。
一方、低レベル廃棄物のドラム缶、これも曲者だ。持ちだされるのが低レベル放射性廃棄物ではなくて、ガラス固化される予定の高レベル放射性廃棄物だと問題はより深刻になろう。方法は分からないが、高温の使用済み核燃料を何らかの方法で持ち出されたら、廃棄物以上にシリアスな状況が待っている。どう使うかというと、とにかくまき散らすのである。持ち出した放射性廃棄物と爆弾をトラックにつめて、東京、大阪、名古屋などの大都市で爆発させる。特に東京は政治経済の中心地だから絶好のターゲットとなろう。なるべく内陸(海側ではなくて山側)で炸裂させる方が被害範囲拡大に役立つだろう。放射能を持った物質が空気中に広がり、風に乗って拡散されていく。量と放射線のレベルにもよるだろうが、これで大都市を機能不全に陥らせることができる。日本は再び核に負けるのである。
故郷を失う人々が数百万から数千万人出るかもしれない。ミサイル攻撃などの大規模な戦闘以上に破壊という意味では効果を上げる作戦になるだろう。即座に影響を及ぼすことはないかも知れないが、10年、20年スパンで考えると日本人の平均寿命はガクッと落ち込むことになるだろう。見えない毒が世代を越えて影響を及ぼすことになるのである。
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