<収益力が低下>
印刷業界が、これまでにない苦境に立っている。ライバルとして業界を引っ張ってきたツートップ、大日本印刷、凸版印刷が、ともに厳しい決算にあえいだ。欧州など海外景気の低迷、原油価格の高騰に加え、東日本大震災後の広告宣伝費の伸び悩みに苦しんだ。
大日本印刷は、ここ数年で丸善、ジュンク堂、文教堂など書店にM&Aを仕掛け、出版業界の沈滞に布石を打っていた。その一手は成功しているかに見えたが、出版印刷の分野で、とくに雑誌のマイナス傾向に歯止めがかからなかった。ディスプレイ関連製品では、液晶テレビの予測以上の販売不振が響いた。半導体の低迷で、エレクトロニクス部門が大きく足を引っ張った。
連結売上高では1兆5,072億円で前年同期比5.2%減と何とか踏ん張ったが、連結営業利益では49.8%減の340億円と苦しい状況に追い込まれた。東日本大震災以降、夏にいったん持ち直したが、その後、秋以降に再び鈍化した。
一方で、交通系のICカードや住空間マテリアル部門の独自の技術を使った環境配慮製品はプラスになるなど、光明もある。14日の決算発表記者会見で、大日本印刷の山田雅義副社長は「エレクトロニクス部門がマイナス要因になった。テレビの低迷に関して楽観してはいなかったが予測以上の落ち込みだった。液晶カラーフィルターでは、スマートフォン、タブレット端末向けの中小型品にシフトしていく」と、好調のスマートフォンなどに期待をかける。また、丸善などの書店と連携し、紙と電子書籍の両方を販売する"ハイブリット型総合書店"を開始する予定。
<下降傾向続く紙媒体>
グループでの総合力に強みのある凸版印刷は、連結売上高で前年同期比3%減の1兆5,104億円と体裁を保ったが、連結営業利益では29.9%減の315億円と、こちらも下げ幅が厳しい。売上高は大きく落ち込んではいないものの、収益力の低下が顕著だ。
活字離れという時代の潮流。インターネットが普及し始めた90年代から新聞、出版市場の右肩下がりが目立ち始めたが、ここにきて携帯電話、スマートフォン、iPadなどIT機器の技術の発展、小型化、普及を経て、紙媒体市場の縮小が加速。スマートフォンなど情報端末の普及が予測以上に早く、出版印刷関連部門の落ち込みに拍車をかけた。ニーズを汲み取り、IT時代に合わせた事業のシフトが急務となっている。
凸版印刷は、電子書籍市場での、端末向けのコンテンツ制作、配信サービスなどを展開。大日本印刷は、パッケージの生産工場をインドネシアに置き、ベトナムに第2の拠点を来年4月から稼働させるなど、海外での事業展開で打開策を探している。
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