<M&A候補の魅力を失ったベスト>
ベストが3社のなかから選んだのはビックだ。08年8月、ベストはビックに対して第三者割当増資を実施。ビックは15.03%を保有する筆頭株主になり、ベストを持分法適用関連会社に組み入れた。ヤマダはベストとの提携を断念したが、現在もベストの7.45%を保有し、ビックに次ぐ第2位の株主だ。ビックに続きベストにも袖にされたエディオンは09年夏、コジマの買収に動いたが、これまたコジマの拒否にあった。
では、ビック=コジマ、エディオン、ベストの反ヤマダ大連合は実現するのか。4社の売上を単純合計すると1兆9,210億円。ヤマダの1兆8,354億円に並ぶ。しかし、07年当時と現在とでは、家電量販店を取り巻く環境は様変わりした。
コジマやベストはジリ貧を通り越してドカ貧状態だ。ベストの売上高は4年間で4割近く減った。この間、家電量販店のライバルとして急成長してきたのが家電のネット通販。ネット通販首位のジャパネットたかたを運営するジャパネットホールディングス(佐世保市)は2大特需の反動で、11年(暦年)の売上高は前年比13.0%減の1,531億円と初めて減収になった。それでも今後は成長軌道に戻り、数年後にはベスト単体の売上高(13年2月期は2020億円の見込み)を追い抜くと予想されている。
07年には、ベスト買収にヤマダ、エディオン、ビックが動いたが、いまやベストはM&A候補者の魅力が色褪せてしまった。エディオンは、自社が主導権を握れる再編はウェルカムだが、ビックの傘下に入るのはノーサンキューだ。4社大連合結成への道は険しい。
<ヤマダは省エネ住宅に注力>
M&Aを仕掛ける力をもっているのは山田昇会長(69)が率いるヤマダだけだが、ヤマダは同業者の買収から手を引いている。注力しているのは、次世代省エネ住宅「スマートハウス」。中古住宅を太陽光発電や省エネ家電にリフォームして販売する事業だ。家電の売り上げの伸び悩みを補い、業界トップの座を死守する構えだ。スマートハウス事業は15年3月期には3140億円の売り上げを計画している。そのためM&Aの標的は異業種だ。
昨年8月に、中堅の戸建て住宅メーカーのエス・バイ・エル(S×L、大阪市)を84億円で買収。今年5月には、住宅設備機器大手のハウステックホールディングス(東京・板橋)を100億円で買収すると発表した。省エネ住宅「スマートハウス」事業で住宅と家電製品、住宅機器を一括提供する体制を整える。家電から住宅までの一軒丸ごとのビジネスである。ヤマダは家電再編の主役の座から降りている。
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