<奢るものは久しからずや>
ひと昔前は「鉄は国家なり」と認知されていた。それだけ製鉄業が日本の政治、経済、社会を制圧していたのである。当然、経済界団体のトップに君臨していた。いまでも産業界において製鉄の重要性は変わらないが、社会における位置は低下した。産業構造が激変したのだ。いまや「鉄は国家なり」の言葉はピンとこないところまでなり下がった。現在、製鉄業界も国産戦争に勝ち残るために3グループに集約されている。平家ではないが栄華を極めれば衰退するのは世の習わしであるが、現代の栄枯盛衰は一段と過酷である。
鉄鋼業界にとって代わって登場したのが東電を頂点にした九電力の国家支配である。「電力は産業の血液、市民生活繁栄を支える米」と称えられて政治、行政、経済、マスコミ各界に君臨するまでになった。それは「原発マフィア」といわれる利権集団が構築されたからだ。原発ビジネスで九電力は高収益をあげて懐が暖かくなった。ばら撒く金も半端ではない。ばら撒く金は販促費、交際費ではないのだ。九電力のみは原価に充当できるルールづくりが認められている。羨ましい限りである。
金をばら撒ければ誰でも尻尾を巻く。【2011・3・11】の福島原発爆発の際にマスコミのお歴々は東電会長と北欧に視察にでていたことが判明した。さすがタダ接待旅行というわけにはいかない。気持ち程度の旅費はだしていたようだ。マスコミを手玉に取るのだから学者、政治家、役人を誑かせるのはお手の物である。この鉄壁の布陣=「原発マフィア」の体制は永続化すると誰でも確信していた。
一方では誠実な学者たちが「原発の恐ろしさ」を説いてきた。だが原子物理科学の領域では極少数派に過ぎず影響力は皆無であった。ただ地震学会からは「日本は地震の巣窟だ。絶対に原発を建設してはならない」と警告を発していたようだ。残念ながらこの指摘は封殺されてきた。マスコミも真剣に取り扱ってこなかった。だから少数意見に留まり世論形成には至らなかった。
<【2011・3・11】 は神の神託>
「原発マフィア」の栄華の永続化は誰しもが疑いの念を持っていなかった。突如、東日本大震災が襲った。津波に襲われた福島原発は機能麻痺に陥った。爆発も起こりメトルダウン化した。いままでの「原発神話」は壊滅した。福島県の中央部にはぽっかりと空白地域が現れた。人が住めない地域である。被爆復興、補償を含めれば優に10兆円は下らない。大半は公的資金(税金)で賄われるであろう。
ここまでくれば「原発廃炉」という国民合意は成立になった。この時代転換に無理解な輩=「原発マフィア」は必死になって原発稼働再開の策動に躍起になっている。「神の意志に逆らって碌なことにならない」ことがわからないのか!!「原発マフィアの横暴さが日本を潰す」と神が【2011・3・11】を引き起こした必然な事象なのである。
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