<東電ですら【2011・3・11】から奈落へ向かって駆け下りている>
広い福島県の海岸から北西部の中間ゾーンには無人・空白の場所が生まれた。原発の爆発で死の灰が散って人が住めなくなったからだ。福島第4原発が爆発していたら、関東地区から住民の退避が余儀なくされていたそうである。こうなると、日本の国家機構は破綻していたであろう。しかしここまできても【原発利権集団】は【2011・3・11】の意味をまったく理解できていない。
組織外の万民の方が賢明である。「『狼が来るぞ』の警戒情報が当たった。想像以上に原発事故の被害は莫大だ。日本の地から原発を一掃しよう!!」という共通認識に至った。政府は、東電に10兆円の公的資金(税金)を投入して再建させようと躍起になっている。法的整理を行なって企業再生の道を選んだほうが安上がりなのであるが、無駄な税金の浪費をしている。東電すら破綻という奈落の寸前にある。想像だにしなかったしなかった津波の襲来で過去の常識が洗い流されたのである。
<九電も倒産の危機寸前>
九電も、東電と同様の破綻の淵に立つ経済状況に転落しつつある。九電の2012年3月期をよーく参照していただきたい。筆者は、何回も「九電の、かつての財務状況の深さには感服していた」と記述してきた。「さすが九州一のトップ企業」と唸った。使用済み核燃料処理引当金を4,000億円近く積み上げていたのである。ところが【2011・3・11】が起きて「とんでもない!! 4,000億円では足りない。九電は砂上の楼閣の経営をしていたのだ」という認識が広まった。「不動の九電」という神話が破壊されたのである。
2012年3月期、原発再開稼働ができなかったことで最終赤字1,749億円を計上した。自己資本7,667億円、有利子負債2兆2,000億円の膨大である。現在、金融機関も相手してくれない状態だ。「痛快」と言えばそれまでであるが、九電の昭和30年代初期に戻った感じである(この件は後シリーズで述べる)。九電の財務担当者が金融機関に頭を下げる様を目撃すれば「信じられない」と目を丸くするだろう。【2011・3・11】以降、九電に対する金融機関の対応は中小企業以下の扱いなのである。
この3月に緊急の経費削減を発表した。1,200億円の経費圧縮を実行するそうだ。しかし、原発再稼働が年末まで遅れると「2013年3月期は3,000億円を超える赤字決算になるのではないか」と囁かれている。そうなると自己資本は一挙に4,000億円台まで目減りする事態が想定される。簡単に値上げが許される環境ではない。収支トントンにするには単純計算すればあと2,000億円の経費切り詰めが求められることになる。こうなると「原発発電ビジネスの経営は民間企業では無理、九電の存続は困難だ」というレッドカードを突きつけられる可能性もある。今回の神託は、栄華を誇ってきた九電など「九電力」にとっては過酷なものになってしまった。
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