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赤字になったゲーム界の覇者・任天堂(前)
特別取材
2012年8月16日 12:10

 ゲーム界の覇者だったはずの任天堂が、坂道を転げ落ちるように業績が悪化している。2012年3月期に初めての赤字に転落して以来、今年の9月中間決算まで赤字垂れ流しは続く見通しだ。唯我独尊的な独特の社風の老舗に、いったい何が起きたのか――。

wii.jpg 任天堂は09年3月期の連結決算で過去最高の1兆8,386億円の売上高を記録し、営業損益(5,752億円の黒字)、経常損益(4,486億円の黒字)、当期損益(2,790億円の黒字)というすべての損益で過去最高益を更新した。04年に発売したニンテンドーDSと06年発売開始のWiiによって、それまで任天堂の地位を簒奪し続けてきたソニーのプレイステーションに仕掛けた全面的な反転攻勢が成功し、ゲーム界の覇者の地位を取り戻したのである。

 このころの任天堂の鼻息は荒かった。「ゲームは高い技術で楽しむものじゃ、ありませんよ。面白くなければ」(広報担当幹部)。半導体の高性能化を掲げた技術者上がりの久夛良木健が敷いたソニーの路線を、暗に嘲笑しているのは言うまでもない。天下の任天堂に挑んで覇権を握ったソニーから、今再び任天堂が覇権を奪い返したのだ。そんなリベンジに成功した高揚感に任天堂はつつまれていた。
 それは、たった3年前のことだった。

 しかし、今の任天堂にその絶頂期の面影はない。3年後の12年3月期決算では、売上高はなんと3分の1の6,476億円にまで急減してしまっている。これは05年3月期ごろの水準だ。すなわちDSとWii効果がすっかり剥落してしまったのである。
それだけではない。営業損益は373億円の赤字、経常損益も608億円の赤字、当期損益も432億円の赤字だ。これは1962年に大阪証券取引所2部と京都証券取引所に上場して以来初めてのことだった。「明智の三日天下」――。誰もがそう思った。

 任天堂は実に不思議な会社である。もとは花札やカルタが中心だったが、ファミコンであてて様相は一変。ゲーム界のリーディングカンパニーとなった。下がったとはいえ、社員の平均給与は36歳で905万円と待遇はいい。
 自分たちこそがゲーム界の中心だという思い上がった独善的な社風のため、絶対に自分たちの非や失敗は認めない。それは実質的な創業者といえる前社長の山内博の性格を体現したものだったともいえるだろう。山内教、あるいは任天堂宗とでも呼べそうな、外部には排他的、身内には忠誠心の厚い異色な社風が構築されていった。それは、京都の「お寺さん」とどこか相通じるものがあった。

 そうであるがゆえに任天堂は自らの失敗をまったく認めない。昨年2月に2万5,000円で発売したニンテンドー3DSを販売からわずか半年後の昨年8月には1万5,000円に思い切った値下げをしたが、「値下げしたから赤字になるのは当たり前です」と言ってのけるのだ。製造単価よりも安くしたのだから「逆ザヤ」によって赤字に陥るのは当然、というのである。

(つづく)
【尾山 大将】

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