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赤字になったゲーム界の覇者・任天堂(後)
特別取材
2012年8月17日 07:00

 7月25日に発表したばかりの2013年3月期の第1四半期(4~6月期)決算も営業損益は103億円の赤字で、依然として赤字は続いている。同日に公表した見通しでは9月中間決算でも250億円の赤字で、年度後半になって立ち直って通期では350億円の黒字になると推測している。とはいえ、通期の売上高予想は8,200億円で、ピーク時の半分以下で1兆円も目減りしまっている。経営が苦境にあることには変わりはない。

 任天堂の敗因はひとえにDSやWiiが売れなくなったことに尽きる。小中学生を始め、ゲーム愛好家の多くに流通し、もう購買層には飽和状態なのだ。
 任天堂はゲーム機とソフトの双方で利益を稼ぎ出すことを得意とし、従来のゲーム機が飽きられてくると新型機を開発し、市場を一変させて仕切り直しをしてきた。そうすることで飽和した市場を白紙に戻し、再びビジネスチャンスを得ようという算段である。この任天堂の常勝の方程式がいよいよ通用しなくなった。新型機種の3DSが思いのほか不振で、価格を4割引きしなければならなくなったのは、そのためだ。

kt_1.jpg なぜ任天堂は失速したのか。その理由として考えられるのはゲーム界を取り巻く環境の激変だろう。もはや従来の家庭用テレビゲーム機で遊ぶ層は薄くなっている。携帯型ゲーム機さえ同様だ。スマートフォンや携帯電話など電話でゲームするのが当たり前となり、グリーやモバゲーのディー・エヌ・エー(DeNA)が台頭する。ゲーム界のパラダイムチェンジが起きたのである。

 任天堂は長短期の金融債務がまったくない超優良企業ではある。しかし、一時は9,000億円もあった「手元現預金」が、いまや4,000億円にまで半減している。危険信号だ。
 山内の後を継いだ岩田聡社長(52)は室蘭市長だった父を持ち、パソコンオタクが高じてHAL研究所に入社した。一介のプログラマーだったが、やがてHAL研究所の経営が暗転して任天堂の傘下に入ると、山内に見込まれて社長として采配を任された。そのときの陣頭指揮を買われて、のちに任天堂の経営企画室長、そして山内の後釜の社長に抜擢されている。そのあとの破竹の快進撃はまさに山内の見込んだとおりだったが、この2、3年は打つ手が続々と裏目に出て「空回り」をするばかりである。

 据え置き型の家庭用テレビゲームと携帯型に固執する従来路線は、もう行き詰っているのではないか。岩田の降板を含む大掛かりな経営層の一新こそが、任天堂が出直すには必要なのではないか。従来の必勝パターンではない思考回路をもつ新たな経営層がいま、任天堂には求められているのである。

(了)
【尾山 大将】

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