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公開!JR九州「ななつ星」(6)~観光列車づくりの集大成
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2013年4月 1日 13:13

 2日目、ななつ星が隼人駅に着くと、乗客は列車と一体でデザインされた専用バスで霧島温泉へ向かう。宿泊先は、DXスイートの客が「天空の森」、スイートの客は「妙見石原荘」または「忘れの里雅叙苑」。
 ななつ星の旅が形になるまでに1番苦労したのは"コース作り"だと、JR九州鉄道事業本部クルーズトレイン本部長の古宮洋二氏は語る。
 「3泊4日の制約の中で、乗っている景色も楽しみですけど、ずっと乗車したままではお客さまもお疲れになるでしょうから、どこにいい場所があるのか、観光も入れ、旅館での宿泊も入れと、苦労したといいましょうか、悩んだところです」(古宮氏)。JR九州社内では「初運行から1年ほどしたら、別のコースに変えよう」という話が出ているというが、古宮氏が「次のコースが思い浮かばない」と打ち明けるほど、ほかには考えられないほど落ち着きのいいコースに練り上げられている。

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<絶対に外せなかった温泉旅館での1泊>
 古宮氏として絶対に外せなかったのが、温泉地の旅館での1泊だった。
 「旅館でゆっくり九州のいい温泉に入って足を伸ばすというか、列車とは違うゆったりしたところを体験していただければ、1泊目と3泊目の列車が生きる」。それは、九州が誇る自然、食、温泉、文化や歴史を楽しんでもらうという「列車のクルーズ」のコンセプトにも合う。
 真ん中の2日目に旅館での宿泊を入れたのは、トワイライトエクスプレスの乗客の声も念頭にあった。日本を代表する豪華個室寝台特急は22時間かけて札幌から大阪まで日本一長い約1,500キロを走る。年配の乗客には「けっこう疲れましたね」という声があることを、旅行会社からヒヤリングしてわかったからだった。

 九州には、湯布院、黒川、別府、雲仙と"全国区"の人気温泉地があるなか、霧島を選んだポイントはどこにあったのか。
 「1つは、行程的にどういう組み立てがいいのかというところにポイントがありました。3泊のうち2泊目を旅館で過ごしていただくという流れでいきますと、エリア的にみると、九州の南がいいとなりました」
 「天空の森」を選ぶにあたっては、古宮氏自身も実際に泊まってみて、「結婚して数十年のご夫婦が泊まるのにぴったりの素敵な旅館でした」と言うほどほれ込んだという。もっとも古宮氏は1人で泊まったため、もてあましたようで、「この広い部屋で何をするんだろうと。われわれは毎日、仕事ばかりの生活をしていますので、逆にあそこに泊まりますと落ち着かないんですね、わっははは」と、頭をかきながら大笑いした。

<選べる「オリジナル特典」プラン>
 3日目は、それぞれの旅館で朝食を食べた後は、ゆったりと過ごす。「天空の森」で散策したり、昼食を食べてから、列車に戻る。隼人駅を出発した列車は、鹿児島中央駅へ。オリジナルプランを楽しんだ後は、夕食は鹿児島市内にある「仙厳園」で島津家に長年伝わる"大名料理"を召し上がっていただく。鹿児島中央駅を午後10時頃出発し、4日目の朝6時頃、阿蘇駅に着く。

yuhuin.jpg プラン作りには趣向を凝らしている。
 説明会では、JR九州の車両への期待、九州観光への期待が出されるのは当たり前だが、ななつ星の乗客しか体験できない「オリジナル特典」への期待があるという。その1つが、薩摩焼・沈壽官窯の通常非公開の茶室を訪ね、絵付けを体験するプランだ。
 「せっかくいい景色の九州に来ていただけるなら、海のクルーズは海しか見えませんが、列車のクルーズは、海や山、川、田園あり農村あり都会ありと街の表情も、常に変わっていく景色を眺められます。せっかくなら車窓から眺めるだけでなく、列車からおりて観光したいというお客さまに選べるプランを選択制で用意しました」と古宮本部長。
 由布院では、ゆふいん散策か列車内でのティータイム、宮崎では宮崎神宮・青島神社観光か列車内でのティータイムというようにプランを選べるようになっている。「シニアの方の中にも、アクティブに動かれる方、いろいろ周るのがいいという方もいらっしゃると聞きましたので、苦心しました」と言う。4日目の阿蘇駅では、希望者には早朝ウォーキングもオプションで用意されている。
 阿蘇駅を出発した後は、専用バスでの阿蘇・黒川観光と、列車の旅の二手に分かれて、豊後森駅で合流。アフタヌーンティが振舞われ、お別れイベントの後、終着駅である博多駅には午後5時半頃に到着する。

<九州の誇る自然や食、文化をつなぐ>
 「列車のクルーズ」というコンセプトを持つ「ななつ星」は、JR九州が観光列車をつくってきた集大成だ。
 JR九州は、「いざぶろう・しんぺい」をはじめ9つの観光列車を走らせ、ローカル線を復興させてきた。そこに関わったのが、当時鉄道事業本部の営業部長だった現社長の唐池恒二氏とデザイナー水戸岡鋭治氏のコンビだった。そうした中、唐池社長は「九州には、自然、食、温泉、文化や歴史、観光資源がいろいろある。それをつなぎあわせるようなのができればいいなあ」とずっと思い描いていたという。
 観光列車に関しては、古宮氏は現職の前に営業部長を2年、運輸部長を4年経験し、観光列車の車両を作るほうから半分以上携わっている。唐池イズムにどっぷりつかってきたといえる。古宮氏は、こう話す。
 「九州というのは、やっぱり1つの島国ですし、鉄道の線路をみますとちょうど周遊できるようになっているんですよね。そして各県の歴史や観光資源を生かす。そこから、九州を周遊する、クルーズする、1周するという企画のベースが生まれました」

(つづく)
【山本 弘之】

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▼関連リンク
・JR九州クルーズトレイン「ななつ星in九州」ホームページ


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