<東アジアで協力体制強化>
日本政府は、PM2.5など深刻化する大気汚染に関し2月22日、中国側と北京で会談の場を持った。中国側からは環境保護部、日本側からは、外務省、経産省、環境省の担当者が出席した。
日本側からは、中国の大気汚染が日本の環境に悪影響を及ぼす可能性があり、高い関心を示しているとの強いメッセージを出した。
東アジア地域において、中国は大気汚染だけでなく、ベトナム、フィリピンなどとも領土問題を抱え、ミャンマー、ラオスなどの隣国ともエネルギーやインフラ開発において、問題を抱えている。
今のところ、中国側は日本側の要請を「謙虚に受け止めている」(外務省アジア太平洋局の担当者)という。
「大気汚染には中国の方が深刻に苦しんでおり、中国側は現状を謙虚に受け止めている。日本を含めて、先進国の技術を学びたいと言ってきています。すでに大気汚染に関する技術協力は進んでいますが、プロジェクトを始めたからと言って、すぐに結果に現れるわけではない。今後、長期的に継続していく必要がある」(外務省担当者)。中国は、日本の環境技術を必要としている。
<日本の環境技術の見せどころ>
国境を越えてくる中国からのPM2.5は日本にとって"迷惑な代物"であることに変わりはないのだが、広く、東アジアの環境、情勢を考えた時、政治的には悪化傾向にある日中関係が、大気汚染の抑制、削減、技術連携をきっかけに、協力し合うことで、ひょっとすると、解けない氷塊が、解ける可能性はある。
越境汚染に対して、「技術で協力する日本はやさしすぎる」との見方がある一方で、自分だけでは解決できない環境問題で、日本を含めた先進国の技術に頼らざるをえないというのが中国の苦しい胸の内。
東アジアの情勢を俯瞰的に見て、日本は、その本領である技術力を戦略的に使えるかどうか。日本が、一度失いかけたアジアのリーダー国としての風格を取り戻し、アジア各国に「技術力だけでなく、(中国とは違って)精神性も、さすがは日本」と言わしめるのは、ここかもしれない。
「利」も取っていかなければならないだろうが、さまざまな害をまき散らす中国に辟易しているアジア各国の「信」を取り、日本の底力を見せる本領は、環境問題にあるのではないだろうか。PM2.5などの大気汚染を解決することで、中国との関係改善を図る方向もある。それとは別の道で、環境問題をきっかけとして、日本、フィリピン、ベトナムなどによる東アジアの中国包囲網ができあがる可能性もゼロではない。
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