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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(20)
経済小説
2013年4月 4日 07:00

<経営会議(19)>
 大沢の話を受けて頭取の谷野は、
「先ほど貸出の話がいろいろありましたが、少なくとも6階の役員室のなかには営業の窓口として営業本部長がいます。一方審査担当役員がおり、これはリスク管理上も分けているのですが、今支店サイドの方がおっしゃっている貸出基準が厳しいというのであれば、それは営業本部の方にも当然上がってこなければいけません。与信管理のグリップが強すぎるのであれば、営業本部長は審査担当の役員と渡り合わなければいけません。しかし私は、役員室でそういう議論が行なわれたところを1回も見たことがありません」
 と、円卓テーブルの右手に座る営業本部長の川中常務の方に目をやりながら話した。名前こそ出なかったが営業本部長と名指しされた川中は、反論することもなくうつむいたままであった。

b_26.jpg 続けて谷野は、
「そういうステップを踏まずに、皆さん方はどちらかというと谷野を排斥するためにいろいろな理由を付けていらっしゃる。これは第三者が見てもそうです。いかにして排斥するか、そのための『いわゆる為にする議論』です。いろいろな理由付けをしていますが、『先に結論ありき』になっています。だから話は進展しません。私が経営を私物化しているとか、独断専行であるとか、それから営業店では一体何をやったら良いかわからないと言われるけれども、そういう声がもし本当にあるならば、どこからか入って来なければなりません。先ほど沢谷専務が事前に言ったということだけれども、2週間くらい前に初めて来られて聞きました。そして2回目は先週の土曜日に聞いたということですよね。私も個性が強く怒鳴ることもありますし、誰かが言われたように本部の役員の人たちが1番怒られているかもしれませんが、銀行のためを思ってやったことです。

 もう一つどなたかがおっしゃった新しい3カ年計画のスタートだということ、それで若返りをするということ。丁度任期満了だということ。それを2年という区切りで判断するのは、余りにも根拠が薄弱であると思います。私が仮に6年、8年、10年頭取をやっているのであればなる程と思いますが、今おっしゃる理由で、2年でもって、『おまえは再任に値しない』と言われることには、私はどうも納得がいかないのです。

 この前も沢谷専務をはじめ何人かの方が来られて自発的な退任を迫って来られました。私は最初話を受けた時、本当ならばこういうことであまり揉ませたくないと真剣に考えました。その時も、『私が納得できる理由があるなら、今の地位に拘泥しません』と言いましたが、辞任を求める内容が、『個人的な好き嫌い』を理由としていたため、私としては銀行のためと思ってやっているわけですから『どうも納得がいかない』と、退任の申し出をお断りしました。
そこで私が沢谷専務達に、『うん』と頷けば済むことだったけれども、しかし私は『当行にとってそういうことでトップの首を挿げ替えるのは、果たして良いことかどうか』ということで抵抗したわけです。今も全然自分の地位に恋々としてはおりません」
 と、苦渋に満ちた言葉を口にした。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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