ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(13)
経済小説
2013年3月26日 07:00

<経営会議(12)>
b_18.jpg 大沢監査役の問いかけに古谷は、
「任期満了で新しい体制を組み直すということは許されないのですか。私はこの2年で、任期満了で新しい体制を組み直すという ことは許されると思っています。新しい体制で、前向きな体制で営業に臨んでいきたいと思っています」
 と、強い言葉を返して来た。大沢は、
「許す、許さないの問題ではなく、こういうようなことは常識ではありえないのです」
 と答えると、すかさず反応したのは専務の沢谷だった。

「2年の任期が長いか短いかということは判断しにくいところです。トップが辞められるということは、自分が任期満了でご退任ということをご判断されれば、こういうケース以外はもう起きないと思っています。それと先程話が出ましたが、今のような状況で良いのかということ。営業店におりますと、新聞に顧客預金の横領や情報漏洩等の不祥事などいろいろなことが出てくるとなると大変で、責任はどうなっているのか、維新銀行はどうなっているのかという声がいつも出てきます。
 あるいはまたBSコンサルティングの話も出ましたが、若干風通しと言いますか、行員自体が自由闊達にものを言える状況にはないと思います。営業店長に聞いても、こんなことはあまり言いたくはないのですが、いろいろなことをやっても、『これは駄目だ。それも駄目だ』と言われ、営業活動に集中できないということが現実には起きていることは事実です。そういう面で60周年を期に、新しい体制でやりたいというのが我々の考え方です。以上です」
 と述べて、古谷を援護した。

 それを聞いた大沢は、
「最近不祥事件は地方銀行でもかなり起きていますが、行員の不祥事件で責任を取った頭取がいますか。そういうことを調べましたか」
 と問われると、沢谷は反論することが出来ず黙り込んでしまった。
 大沢の話を受けて谷野は、
「私も今回のように不祥事件が連続して起こったことに対して、トップとして非常にお客さんに申し訳ない、行員にも申し訳ない、株主にも申し訳ない。それで記者会見を開き公の場で謝罪したわけです。ただし、それでもって経営責任だと言われると、今後も今問題となっているような不祥事件は起こらないとは限らない。今からもっともっと、特に情報漏洩問題などは起こるかもしれません。その度にトップが替わるということが果たして良いことかどうか。

 私は不祥事については、『トップ自らが不祥事に関係した場合、あるいは組織ぐるみであった場合、そういうものに対しては、これは任期途中であっても責任を取って辞める』ということはあると思いますが、昨年の顧客預金の横領事件、あるいは情報漏洩等で頭取が責任を取るということは、今、大沢監査役がおっしゃったように他行の事例もありません。あるいはそれをやれば今後その度に同じことを繰り返すことになると思います。その辺だけは言っておきます」
と、自らの責任の在り方について語った。

(つづく)
【北山 譲】

≪ (12) | (14) ≫

※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル