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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(29)
経済小説
2013年4月17日 07:00

<経営会議(28)>
 古谷取締役は、
「今はもう営業店は委縮しており、委縮したのはこの体制だから委縮しているわけで、これは任期満了だから体制を変えたい と言っているのです」
 と、谷野批判を繰り返した。
 常務の吉沢は、
「先程から大沢監査役の話を聞いていると、反論するために『銀行のため、銀行のため』と言われていますが、私たちも維新銀行のためと思って、熟慮に熟慮を重ねてこの結論を出したわけです。行員は絶対に動揺しません。間違いなく私たちがきちんとします」
 と、強い口調で言い切った。

 それを聞いた大沢は、
「その辺のことを、どうしてそうなのかということを聞きたいのです」
 と、問うと、吉沢は、
「それは支店長を集めてきちんと説明致します。あるいはお客さんにもきちんと説明します」
 と答えた。
 大沢が、
「それで100%大丈夫ですか」
 と聞くと、
 即座に吉沢は、
「私は大丈夫だと思います」
 と答えた。
 さらに大沢が、
「それは思うということだけでしょう」
 と訊くと、すかさず吉沢は、
「大沢監査役が言われることも思うということだけでしょう」
 と、互いに譲らない言葉の応酬が続いた。

 そのやりとりを聞いていた頭取の谷野は、
「吉沢常務がおっしゃる『支店長を集めて行員にきちんと言います』とは、どういうことを言うのか教えてほしい。私はマスコミにそれを言わなければいけない。マスコミはもっと厳しく訊いてきます。私なりに考えてはいるが、それで『なるほど』と言って納得してもらえるかどうか自信がありません」
と、肩をすぼめるような態度を見せた。

 それを見て吉沢は、
「納得して抱けるかどうかわかりませんが、私の考え方を申し上げます。『今回の役員異動については当行が60周年を無事迎え、収益回復できたことにより株主に対しても記念増配で報いることができた良い区切りとなります。70周年に向けて役員・行員が一丸となって当行の発展と繁栄を目指すためには、若さを前面に打ち出し難局を乗り切ることが重要です。そのためには全行員がはつらつとして働ける環境づくり、即ち上意下達や下意上達が自然な形でおこなわれる体制と、自由闊達 な雰囲気作りを醸成することが大事だと考えます。
 当面の課題は新3カ年計画を必達すること、および顧客の信頼を取り戻すことを第一義として、一生懸命全行員が知恵を絞り、汗を出して、努力することを誓うことが前提となります。皆さん方の絶大な協力のもとに、新体制を盛り上げていってほしいと考えますのでよろしくお願いします』と説明します。これで納得いくか、いかないかは別ですが」
 と自分の考えを披歴した。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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