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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(22)
経済小説
2013年4月 8日 07:00

<経営会議(21)>
 沢谷専務の発言を聞いた大沢は、
「維新銀行を絶対に良くするという考え方で皆が話をする、考えるのであれば、少なくとも頭取の再任を拒否するというような結論にはならないと思います。そういうことは議事録に残ります。そして必ず今の経緯が外部に漏れます。
 つまりもし頭取が再任を拒否されてメンバーが替わるとなると、これは皆さん極端にいえば、現頭取への個人的な感情を共有するグループの方がまとまって、『数による暴挙を行なう』という感じです。明らかにそういう感じがします。次の頭取にどなたがなるか知りませんが、今言ったように議事録に出て、いずれ話は漏れます。そうした場合に、たとえばマスコミあたりは、会長が辞めて同時に頭取が辞めるとなれば、すぐに取材に来ます。その時『若返り』のためと主張しても、『はい、そうですか』というようなことにはならないと思います。多分いろいろなことが漏れるからです。
 また新頭取に対するマスコミのインタビューで、『あなたの抱負は』などとは聞かないですよ。『会長と頭取が同時に退任するのはどういうことか』と、必ずしつこく聞いてきますよ。
 もしたとえその場は何とか切り抜けたとしても、何日か、あるいは何カ月後には今回のことが明らかになり、本当は銀行のためを思ってやったのではない、これは自分達の身を守るための一種のクーデターだと言うのがはっきりします。これは必ずわかることです」
と、守旧派に対し自制を求める強い言葉を投げかけた。それを聞いた北野常務は、
「大沢監査役は暴挙とおっしゃるけれども、我々は維新銀行を良くするための前向きな行動と考えています」
 と、語気を強めて言った。

「人それぞれの考えがあるでしょうから、それはそれで良いですよ」
と大沢が言うと、北野はむっとした顔を顕わにして、
「それは見解の相違です」と言い返した。
 すかさず大沢は、
「それはあなたの考えでしょうが、世間一般ではそうは思わないと言っているのです。あなたに、『私の言うことを100%その通りと思え』とは言いません。考え方はいろいろあるけれども、このまま頭取交代に突き進めば必ず問題が起きます。そうすると行内も必ず割れます。行内外で風評が飛び交います。相当の混乱が起きます。次の頭取はどなたか知りませんが、これがどんどんマスコミに取り上げられて、維新銀行の新しい頭取は訳のわからないクーデターでなった者だということになると、自信をもって経営ができますか。これはなかなか難しいと思いますよ」
と、ポスト谷野の経営に大きな不安があることを口にした。
 すると常務の吉沢が、
「ここにいるメンバーが黙ってさえおれば、漏れることはないのではないですか」
 と話すと、大沢は、
「そんなことはすぐに漏れます」
 と、言い返した。
 すると吉沢は即座に、
「金融庁が議事録を見てどうだこうだと言っていますが、そんなに心配することはないですよ。『どうぞ見て下さい』で良いのではないですか」
 と、開き直るような言葉を投げ返して来た。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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