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経済小説

「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(19)
経済小説
2013年4月 3日 07:00

<経営会議(18)>
 古谷取締役の話を引き継ぐように常務の北野も、
「スプレッドの問題は私も役員会で何回か申し上げています。私が何度も頭取に、『0.3%で何とかやらして下さい』と言ったら、『そんなことをしたら元に戻る』とお叱りを受けました。それとはまた別の話ですが、11億円の継続稟議を上げたら担当審査役から、『通らないから10億円に落として上げてくれ、それなら私の権限だ』というような審査の状況になっているのです。すべてとは言いませんが。商手でも決済資金なのに月末の3時になっても承認にならず、支店長は『承認にならない理由が解らない』と、うろたえて私に泣きついて来ました。1つの悪い例かも知れませんが、そういう声が良く耳に入ってきます」
 と、古谷に続き谷野の経営方針を批判する発言をした。

 2人の話を聞いた大沢監査役は、
「それは皆さん方が問題を提起して、改善すべきところは改善する問題です。0.3%のスプレッドの話は取締役会で出た記憶はありますが、その時審査の体制に問題があるから皆で討議しようではないかという話は出ませんでした。それほど深刻な問題になっているのなら何故その時に意見をぶつけなかったのですか。今になってあいつはここが悪い、誰はここか悪いと言っていたら、トップはいくら居ても足りないし、結局もしそれで生き延びられるトップがおれば、これは『人は良いが経営能力がないトップ』でしかなく、経営能力がない人がトップにいれば、いずれその企業の経営は破綻の道を辿ることになります。
 
 こう言っては悪いが、北野常務だって支店長から本部長になっておられますが、なかなか厳しいというので、行員が悲鳴を上げているとかいう話はいろいろ聞いております。だけどあなたが首にならずに常務になっているのは何故でしょうか。それはやはり仕事に本気であるからそういうことになるのです。行員がへこたれているという話は多く聞きましたが、あなたは能力があって実績を上げているから本部長までなっているわけです。人の悪いところばかり見るのではなく、バランスが大切なのです。谷野頭取の優れたところ、あるいは実績、経営改革もやった、ほぼV字回復もやった、そういうプラス面も見て、そしてマイナス面もきちんと分析して、そしてどっちが多いか。マイナスが多ければ、本当にこれが問題だと思えばもう1回我々で討議しないといけないでしょう。
 
 0.3%のスプレッドの件でも、何故、真面目に討議する形にならなかったのですか。もし話にならない、おかしいと思ったら、取締役会で問題提起すべきです。半年前からでも皆さんが問題提起なさっておれば、私共も問題が良くわかる。それでも尚且つ頭取が一向に改めず、そういう問題提起がどんどん続くとなれば、監査役もそんなことがどこまで問題なのか調べます。そしてこれはいけないと思ったら、頭取に直言します。それでもなお彼が聞かなければ、『辞めてくれ』という皆さんの話についてはしょうがないと思うかもしれません。苦労されたということはよくわかるのですが、あなた方はそういうステップを踏んでいないわけです」
 と、北野に向かって話しかけた。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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