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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(26)
経済小説
2013年4月12日 07:00

<経営会議(25)>
 話題を元に引き戻すように専務の石野は、
「今、営業実態、現場のことをいろいろ話されましたが、私共は、例えば北九州地区で言えば12カ店ありますが、そういうようなことで支店長が萎縮しているとか、びびったりとか、本部批判をしたりということは全くありません。ただ審査が通らないというような案件はケースバイケースでありますが、それをチェックするために審査部があるのです。
 だから今まで話されたことは非常に偏った見方で、頭取の人間性を問題にしているということになります。それによって頭取に退任を求める根拠、大義名分にはならないと思います。
 確かに頭取は短気です。そして余りにもストイック過ぎるところがあります。そういうところで行員が敬遠する、あるいは風通しが悪くなるということはあるかもしれませんが、それが問題だというのであれば今後改めてもらえば良いことであり、それを皆さんは今までに言うべきであったと思います。経営方針についても問題があれば取締役会で言わないといけない。そういうことではないですか」
 と、谷野の解任要求を考え直すように訴えた。

 続いて監査役の大沢も、
「先ほども言いましたように、また何度もお尋ねしたように、これをもし強行して、どれだけの混乱にともなうリスクなりをどの程度読んでいるかはまだお答えをいただいていませんが、そういうことも考えておかないとこれは大変なことになるわけです。この混乱というのは絶対に回避した方が良いわけです。確かに頭取にも欠点は沢山あるのでしょうし、私も気付かないところがあると思います。それらについては今後監査役が十分臨店して、問題があれば取締役会で頭取に改善を求めるようにすれば良いわけです。

 今回、皆さん方からこういう手厳しい問題提起があったわけですから、頭取も当然肝に銘じて自ら替えるべきところは変えられると思いますし、更に本部と営業店の意思疎通が少ないということであれば、それは小林取締役が言ったようにメンバーを入れ替えたりしてやってみるということも必要かもしれません。少なくとも皆さん方の話を聞いていますと、いろいろな意見を付けたり、かなり無理をこじつけておられるように私は感じます。そしてそれを理由に一歩も譲れないという感じです。銀行のためではなく、それが先にあって、『それがすべてだ』という感じが非常するわけです。
 やはり物事というのは、全て一本で決めて終わりというわけではないと思います。いろいろなことはお互いに言い尽くしたわけだから、ここは維新銀行のために如何にあるべきかという原点に帰って皆が話をすれば、それなりの妥協点なり落ち着くところが出てくると思います」
 と訴えた。

 すると古谷取締役は、
「我々も考えに考えて今回ご提案させて頂いたのであり、妥協点を見出すのは難しいと思います。むしろ今からの維新銀行のためにどうしたらベストなのかを谷野頭取に良く考えていただきたいと思います」
 と、谷野に自発的な退任を決断するように迫った。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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