ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(31)
経済小説
2013年4月19日 07:00

<経営会議(30)>
A-3.jpg 吉沢常務の言葉を受けて頭取の谷野は、
「その話は先日何人かの方が直談判に来られたときにも、私に勇退してほしいという話をされました。しかし勇退すればそれで済むのか、その場合『マスコミも含め、あるいは取引先、行員、そういったものが納得してくれるかどうか』と、随分迷ったところなのですが、良く考えると、もしそうしても再任を否決された場合とまったく同じ結果になるのです。
 今おっしゃっるいろいろな理由があるなかで、勇退しようが否認されようが、その問題は解決できないのです。

 むしろ最初の話し合いのときに、私の人格的なことまでかなりおっしゃったのでムカッとしたのですが、皆さんがおっしゃるのもそういう背景があるということを知り、自分なりに十分反省はしましたので、翌日にはすっかり冷めていました。今は一切私憤も私怨もありませんが、当時は一時そういう気持ちが起こったのも事実です。

 要するに皆さんが納得する、2年間、63才、業績、株価そういったものを含めて、それでは『勇退したら納得する、あるいは排除されたら納得するか』ということで、悩んだのはそこなのです。しかし自分なりにいくら考えても、今もって皆さんが望まれる勇退する結論には至らないのです。
 まだ議論が出尽くしたとは思えませんが、時間の制限もありますので、まだつけ加えて言っておきたいという方は他にいらっしゃいますか」
 と、出席者に向かって声をかけた。
 
 すると石野が挙手し、
「これはクーデターと言うか、石を持って追うようなことをして、1期2年、業績などを考えれば極めて不自然です。それは世間が黙っていません。お客様は非常に不思議がることは間違いないことです。行員だってそうです。勿論マスコミもです。それによって維新銀行はもの凄いダメージを受ける。そうなれば信用を失墜し信頼を失う。皆さんはその責任が取れるのですか。私はこれは非常に大きいダメージだと思う。必ず内紛が起きているということは分かります。ばれます。そこをはっきりと言っておきたい」
 と述べながら、大きく溜息をついた。
 小林取締役も、
「私も同じ心配をしています。ですからやはりここは逆に言えば、皆さんが納得のうえで再任していただいて、それで先ほど言ったように本部と営業店の人が入れ替わり、それでもまだ良くならなかったら、任期は2年でしょうけれども、例えば1年で辞任していただくとか、そういう方法が取れるかと思います。要はそのときに改善が見られなければ、本当に皆さんが今まで言われたように、その段階で『頭取辞任して下さい』ということになれば、それはみんなの総意ですから誰も反対はしないと思います」
と、訴えるように話しかけた。

(つづく)
【北山 譲】

≪ (30) | (32) ≫

※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル