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チャイナビジネス最前線

戦略なき中国ハイテク産業パーク投資誘致説明会~中国山東省諸城市(後)
チャイナビジネス最前線
2013年4月16日 13:00

<自己資金22億元、投資可能資金額400億元!>
 TIP(江蘇泛域国際高科技産業株式会社)が日本企業に提供できるメリットは大きく分けて、2つである。1つは、日本の大・中企業の投資、誘致に様々な柔軟な行政サービス、便宜を図ることができること。他の1つは、中小企業やベンチャー企業の誘致、進出に関して、TIPの資金力(自己資金は約22億元<約330億円>、資金調達力は約400億元<約6000億円>)を活かして、積極的に投資、資本参加していくことができるというものである。TIPでは、すでに、天津西青区、瀋陽、金壇(長江デルタ地域)等で実績を挙げている。

 中国国家が求める先端産業は、新素材、エネルギー保全と環境保護、新エネルギー、ハイエンド製造装置、新エネルギー自動車、次世代情報技術、環境技術の7つである。この分野のへの投資は、中央政府から投資還元が得られる。さらに、TIPは自ら投資、株主となり、株主利益を得ることも期待している。TIP設立は2012年、すでに2つの会社に投資を予定している。1つは、水処理技術に関するカナダの企業で、他の1つはナノの塗料技術を持つ日本の会社である。

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<日中友好から経済効果が享受できる関係へ!>
 1部の説明会が終わり、2部のフロアーからの質疑応答に移った。その中で、とても鋭い質問があった。質問者はかなり実情に詳しいらしい。「中国の様々な都市を見て感じるのは、日本企業に限らず、韓国企業等においても撤退が続いている。これは地域と産業技術の戦略的ミスマッチングが起こっていることが原因ではないのか。」というものだった。この質問には、李総裁は勿論、関係者の何れも、まともな回答が出せなかった。

 そう、今回ケースで言えば、"なぜ、諸城市なのか?"への論理的筋道がないのだ。記者は、常々、ここに日中間の投資誘致に関する最大の課題が横たわっていると考えている。先の安琳TIP日本代表の話にもあったが、国家が推進を奨励する7つの先端技術は、中国のどの都市でも欲しいのだ。言わば、"ないものねだり"である。何れの分野でも、日本は大中小を含めて様々な高度技術を持っている。そして、日本企業にとっても中国市場は魅力だ。しかし、どこに行けば良いのかが分からない。地域(省、大都市)によってその環境は全く違う。異国とさえ言えるからだ。

 この種の投資誘致説明会になると必ず我が物顔で出席するのは銀行関係者だ。しかし、彼らは、中間搾取が目的なので、実業の成功・不成功には興味がない。そして、自分達だけは、傷つかない枠組みを作り上げる術を持っている。大企業であれば、どんぶり勘定で、進出を決定したサラリーマン社長は結果が出るころにはいないので安心だ。

 しかし、中小企業はそうはいかない。進出の失敗は倒産を意味することさえある。"日中友好"では進出できないのだ。今回の中国側の説明にもあったが、「何でも協力します」を信じる日本の中小企業はない。なぜ、そこへ行かなくてはいけないのか、行った方が良いのかの明確なストーリーが描けない。

 一方、日本の雑誌等の特集では、無責任に"チャイナプラスワン"とか"中国の次のアジア"という文言が踊り、注目されている。何とも節操がない。さらに言えば、本当にそうなのかと疑いたくなるような状況もある。ベトナム、インドネシア、マレーシアそしてタイでさえインフラが整っているとは言えない。中小企業が中国を避け、従来型の賃金が安いという「工場(労働市場)」だけを求める感覚でこれらの国に進出して行っても、絶対に上手くいかないのだ。

 日本国際貿易促進協会の笠井理事長が言うように、「相互理解を深める為には交流するしかありません。交流無くして、理解は存在しないからです」は正しい。今回の催しは評価できる。だからこそ、こんなストーリーなき、根無し草のようなもので終わらせては勿体ないのだ。日中双方にとって良いことをなぜ真剣に検討しないのか。現在の日中冷却期間は逆にこのことを考えるいいチャンスでもある。日本政府、日本の経済界に猛省を求めたい。

(了)
【金木 亮憲】

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