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SNSI中田安彦レポート

黒田「異次元緩和」と財務省の増税戦略(1)
SNSI中田安彦レポート
2013年5月30日 12:30
副島国家戦略研究所(SNSI)研究員 中田安彦

 5月23日の日経平均株価急落は、去年の野田佳彦前首相の衆院解散表明以来、一本調子で株高で浮かれ騒いでいた日本経済に、ようやく冷水を浴びせかける機会になった。翌24日の新聞報道では、前日の日経平均株価の終値が前日よりも1,143円も安くなり、1万4483円まで下がったと報じている。同時期に米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長が、議会証言の一部で今行なっている量的緩和政策(QE)の縮小が数カ月以内に始まると示唆したことを報じられたために、米国でも株安になった。

kabu.jpg 私は、正直なところ、安倍政権発足以来、書店に行けば、「今こそ株を買え」というたぐいの低劣な株本が次々と並んでいくのをみて気分が悪かった。しかし、新聞報道を見る限りでは、この急落は、一時的な調整局面であるといい、この調整局面がどの程度続くのかはわからないにしても、いずれ「アベノミクス相場第2弾」が始まるのだという。確かに、黒田東彦・日銀総裁が「異次元緩和」と日経新聞を始めとするメディアが囃し立てる金融政策を大幅に転換しなければ、マネーは株か国債などの債券に流れるのだから、この調整局面という寸評は間違っていないのだろう。

 23日の株式市場を見ていて興味深いのは、株安が起きる前には東京債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが年1.0%まで急上昇し、債券価格が下落していたことだ。その後、中国の景気悪化のニュースが流れると株を売る動きなり、株安の動きを受けて債券が買われる動きになった(24日「読売新聞」)ことだ。長期金利は、上昇しているとはいえ、過去10年間は1.5%前後をウロウロしていたことを考えれば、まだ低いレベルといえる。長期金利急騰を受け、日銀は抑制のために2.8兆円を資金供給すると発表したので急騰には押さえがかかった。株が上がれば、マネーは債券から株式にローテーションするので長期金利が上がる。これを抑えるために日銀は資金供給や国債買い入れして押さえにかかる。これを当分は、黒田日銀は繰り返していくのだろう。

 また、参院選も近いことを考えれば、黒田東彦総裁に対して、安倍政権は表から裏から、「アベノミクス」の象徴ともなった、「金融緩和による株高」を実現するように圧力をかけるだろう。欧米では選挙と経済指標の間に密接な関係があるという「政治的景気循環論」という研究分野があるほどで、経済学者の金子勝氏は今月の「世界」の論文の中でも、「政治家たちが経済政策手段を利用して景気循環を作っていく手法のこと」と同理論について解説している。

 それにしても、やはりよく言われているとおりに「5月に株を売れ」という格言はやっぱり当たった。この格言は、リーマンショックがあった08年以降、このセリフが5月前後に株が急落すると引用されてきた。
 これは、米国での格言であり、1月から5月にかけて株式相場は上昇、6月から下げる傾向があることから、5月には株式を売って相場から離れたほうが良いという意味で使われる。これは、英語では「Sell in May and go away」という。ただし、これに続けて「But remember to come back in September」とあり、9月頃には株価が底を迎える傾向があることから、そのころに再び市場に戻ってくることを忘れないように、としている。(野村證券のウェブサイトの解説)欧米のバカンスのシーズン前に欧米のファンドマネージャーはいったん、利益を確定させるために株を売り崩すというようなことも言われている。

 アベノミクス相場が過熱気味であることは、23日の急落直前から日経新聞の解説でも指摘されており、23日の紙面では、「株、個人、マネー流入加速」との記事の中で「日経平均は急ピッチで上昇」と温度計のイラスト付きで解説がある。また、22日の産経新聞では、株式市況の活況を受けて、日本株で運用する投資信託が売れすぎて販売を一時的に停止するケースが相次いでいると報じられている。

 だから、このような状態を加熱したまま放っておけば、予期せぬ大爆発が起きることもあり、適度に過熱する相場を冷ます事が必要だ、ともいえるだろう。ただ、実体経済(サラリーマンや労働者の懐具合)が改善しないまま、株高が進んでいた去年来の日経平均株価の動きと円相場の円安傾向の進み具合は異常過ぎたのはいうまでもない。
 アベノミクスが(外国人投資家によって主導された)株高という現象だけで語られることの危険性をもっと認識するべきだ。

(つづく)

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<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


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