学校法人福岡工業大学(福岡市東区、鵜木洋二理事長)硬式野球部は、今年4月20日から5月26日まで行なわれた、「2013年福岡六大学野球 第42回春季リーグ戦」にて、8年ぶりに優勝した(6月11日には、東京の明治神宮球場で行なわれる、全国大学野球権に出場し、12日に、福井工業大学VS上武大学の勝者と対戦する予定)。今回の優勝には、選手、監督、大学側、地域の人々など、同校野球部に関わるすべての人々の思いが共鳴しあって手にすることができたという。その軌道を、同部監督塩屋佳宏氏に伺った。
塩屋佳宏監督は、開口一番、「この優勝についてひと言で言い表すとすれば、『感謝』に尽きます」と、語った。
優勝戦には、学校側関係者、ラグビー部や吹奏楽部など、他の体育会所属部、そのほかの学生などのほか、日頃、同部を応援してくれている地域の人々も駆けつけてくれ、とても盛大に応援していただきました。その熱さに背中を押され、勝機に導かれたという想いです。きっと、どの選手に訊いても、自分ひとりの力で勝てたと答える者はいないと思います」(塩屋監督)
<塩浜総合グラウンドの誕生>
昨年3月、学校側が、約10億円をかけて、福岡市東区塩浜に、野球場(FITスタジアム)、室内野球場、多目的グラウンドを備えた塩浜総合グランドを設けた。両翼95m、中堅122m、照明灯4基を備えるプロ顔負けの球場だ。このグラウンドが硬式野球部の練習場となった。
スタジアムの入り口には、同校の鵜木洋二理事長による文言が記されたプレートが掲げられている。その内容は、以下のとおりだ。
「この『野球道場』の精神を"礼節を重んじる人格の陶冶"と定める。児童、生徒、学生が、挨拶を貴び、以って、地域との交わりを深め、いっそう人間力を形成し、成長することを願い、この地に総合グラウンドを設ける」
選手たちの意欲も一層上がった。授業終了後、夕方から夜遅くまで、今まで以上に熱心に練習に励んだ。立派な球場を作っていただいたのだから、結果を出さねば、という思いもあった。しかし、「学校関係者の方々や、球場周辺の皆さんに見守られている、という気持ちが大きな励みになっていましたね」と、塩屋監督は当時を振り返る。
<地域の人々からの応援を背に受け>
スタジアムの建設にあたって、最初、球場予定地周辺の住民から反対の声が出たそうだ。しかし、いざ完成してみると、夜でも煌々とライトが点き、にぎやかになったことで治安が良くなった。それ以前は空き地同然で、夜は暗く、ひとり歩きには警戒を要するような場所だったのだ。また、多目的グラウンドが、少年野球団の指導場所として活用されるようになり、住民にとっても楽しい生活の場となった。
選手たちも、日頃から、挨拶や、周囲の清掃活動などで、地域の人々とのコミュニケーションを大切にした。こうして、スタジアムを中心として、お互いにWin-Winの関係で支え合う輪が広がっていった。
鵜木理事長が掲げたプレートの文言のとおり、日頃から地域の人たちと良い関係を築き上げてきたことが、決勝戦での熱心な応援という形となって現れた。「あの応援からは、今まで感じたことがないようなパワーを感じました」(塩屋監督)。
もともと野球はチームプレイが重要な競技だが、それは決して野球部員間のことだけではない、と選手たちが実感したのではないだろうか。
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