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濱口和久「本気の安保論」

歴史に学ぶ外交力 日露戦争の陰の功労者・金子堅太郎(後)
濱口和久「本気の安保論」
2013年11月28日 07:00
拓殖大学客員教授 濱口 和久

 金子は米国到着1カ月後、ニューヨークのユニバーシティクラブで、米国の名立たる政・財・官・軍・司法・教育・マスコミ関係者を前にして、日露戦争の原因から当時の状況、日本人の決心の程を述べている。そして最後に、前々日にロシアの海軍大将マカロフが旅順港外で戦死したことを受けて、敵将に対しても追悼の意を表し演説を結んでいる。敵味方の区別なく、死者を顕彰することは日本人らしい姿勢であるが、金子の演説を掲載した翌日の新聞紙上において、日本人は欧米人が考えることのできない高尚な思想を持っていると賞讃された。

sora_16.jpg ロシアの駐米大使カッシーニはいち早く新聞社を買収して反日キャンペーンを展開して、日本攻撃を繰り返していたのに対して、金子は無礼な言辞を並べるのではなく、敵国側でも敬意を示し称えるなど、武士道の美徳を髣髴させる演説でもって対抗したのである。出身校のハーバード大学サンダース・シアター、ニューヨークのカーネギーホールなどでも演説を行なうなど、米国各地で日本の大義と日本人の考え方について、理解を広める活動を展開した。

 ルーズベルトは終始、金子との関係を大事にし、日本に対して好意的な態度を取り続ける。日本が日本海海戦に勝利後、米国に対して、日本が依頼した形ではなく、ルーズベルトが発案した形で調停に乗り出すよう申し入れた際も、この要請を快諾し講和仲介に乗り出しのも金子との関係があったからだろう。同時に金子の苦労の甲斐もあり、当初はロシアよりであった米国世論も次第に日本よりに傾いていった。

<米国から愛された金子>
 金子の功績は、終戦工作の成功だけにとどまらない。日本の文化や価値観、思考方式などについて、多くの米国民に認識を拡げたことの意義は大きい。明治期の先人が求めた武士道の義の追及は、米国民にも共感を呼んだのである。
 その後、日米は大東亜戦争によって敵対関係となったが、その最中の昭和17(1942)年に金子が90歳で死去すると、ニューヨーク・タイムズ紙はその死を大きく報じた。金子が米国に残した足跡は、それだけ大きかったのである。

(了)

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<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。現在は、日本防災士機構認証研修機関の(株)防災士研修センター常務取締役。著書に、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。11月25日には、夕刊フジに連載中の企画をまとめた『探訪 日本の名城 上-戦国武将と出会う旅』(青林堂)を発売。公式HPはコチラ


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