北京の古い生活圏「南鑼鼓巷エリア」にひっそりと建っている「中央戯劇学院」。「学院」という名がつくものの、れっきとした国立の大学で、1950年に建立された。卒業生には、映画監督や俳優、女優等が多く、映画やドラマの世界を夢見る若者が全国から集まる。最も有名な卒業生と言えば、ハリウッドでも活躍する女優・章子怡（チャン・ツィイー）。そのほか、中華圏では実力派として人気を集める孫紅雷、陳思誠らも卒業生だ。

　学院は少数精鋭で学生数も少ない。校舎内に入ると、歌声が聞こえてくる。「舞踏室」で学生がダンスのレッスンをしているのだ。学校の授業は、発声練習や発音、踊り、歌など、芸能界で活躍するに必須な要素が盛り込まれている。日本では、役者になるには、芸能界に入るには、どうしたらよいのか不透明な部分が多い。中国では「戯劇学院」があり、そこで真面目に勉強すれば役者への道が確実に開けてくる。「努力すれば叶う」可能性が高いとあって学生たちのモチベーションも高い。教室や廊下では学生が「油條（ヨウティアオ）」を食べる姿も。生活費を抑えながら生活する中国学生の姿が垣間見える。また、女子学生はそろって長身で、一目で「映える」オーラを放っている。

　中国には「传媒大学」も各地にある。「传媒」とは「メディア」の意味で、メディアを志す学生が通う専門大学だ。北京には難関の国立「中国传媒大学」もある。アナウンサー、ディレクター、記者等目指す職種によって「科」が細分化され、戯劇学院同様、「授業に真面目に通い勉強すれば」目標に近づける。「成績が高い＝マスコミ界における技能もある」とみなされる。採用側も、純粋に大学での「成績」を信用すればよく、学生の選抜にあたって苦労が少ない。成績優秀者は、中国中央電視台、香港フェニックス、湖南テレビなど大手テレビ局に入社できる可能性が高い。

　日本のマスコミ界は、大学での成績、単位取得数よりも「個性」「クラブ活動」など評価が曖昧で漠然としており、採用側が学生の「適性」を見抜けず、採用後に企業と新入社員の「ミスマッチ」が起こる結果、若年層の早期退職を生むことも少なくない。しかし、中国のマスコミでは、18歳前後から業界英才教育が行なわれ適性も養われ、入社後も、有能な人間が安定して仕事を続けられる環境が整っているのだ。

　「中央戯劇学院」では、外国からも語学留学生を受け入れている。総合大学ではなく演劇関連の専門的学校となるが、それだけに「発音」「声調」などについてはしっかりとした指導がある。さらには「役者の卵」と同級生として触れ合うことができるという特典付きなので、日本のマスコミを目指す学生も狙ってみる価値はあるかも。

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