福岡県春日市の(仮称)総合スポーツセンター体育館新築工事で、9月11日に行なわれた本体工事の一般競争入札において重大な疑義が生じている。この工事は、戸田建設・金子建設・永田建設からなる特定建設工事共同企業体(JV)が非公開の最低制限価格35億8,000万円(税別)と同価格で1社応札した。予定価格は40億2,300万円(税別)。情報公開で入手した総務文教委員会の議事録によると、予定価格の実に"88.988317176%"という最低制限価格について、市側は井上澄和市長が決めたとしている。
この入札をめぐって、9月19日に開かれた総務文教委員会が紛糾した。落札価格と最低制限価格の完全一致について複数の委員が追及。情報漏えいにまで言葉がおよんだ。市側は、予定価格の89%すなわち35億8,047万円のうち47万円が切り捨てられたとし、そのことは市長が決めたと説明。さらに、総務部長が「私どもも、この数字(35億8,000万円)は改札後に知った状況」と答えた。その言が正しければ、入札前に最低制限価格が漏れていた場合、その"出処"は限られてくる。
この入札については、ほかにも不可解な点がある。落札したJVのほかにもう1社、別のJVから応募があったが、春日市のルールで、入札書類が受付日(9月10日)に届いたが、"配達日指定郵便でなかったために無効"とされた。市側が確認したところ、「郵便局への事前確認では、指定日前日の配達日指定郵便は可能と聞いていたが、実際に9日に持っていくとできなかった」と、業者は説明。同じ体育館新築工事の機械設備工事(予定価格10億8,200万円(税別))の入札でも同様のケースが1件あった。慎重にならざるを得ない大型案件への応募で、そうしたミスがよくあることとは思えない。
新体育館は、総事業費が約62億円、建築面積約9,000m2、延床面積約2万1,000m2の地下1階、地上3階建て。体育館の地下には約190台の駐車場が配置される。完成は2015年9月を予定。春日市では滅多にない大型案件だけに、不可解な入札に各方面から疑問の声が上がっている。
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