前回触れたように、跡地の利用にあたってはいくつかの課題を抱えている九大・箱崎キャンパス。だが、このエリアをいかに活用していくかは、箱崎地区のみならず、福岡市および福岡都市圏の今後の発展にとっても極めて重要な課題であり、各方面からの注目を集めている。ここで、2013年2月に「九州大学箱崎キャンパス跡地利用将来ビジョン検討委員会」より提言された「跡地利用将来ビジョン」の概要について触れてみよう。
まず、同委員会より示されたまちづくりの方針は、(1)「新たな活力・交流を生み出す」、(2)「充実した教育・研究の環境を生み出し、人を育てる」、(3)「安全・安心・快適で健やかに暮らす」、(4)「歴史文化資源を大切にする」、(5)「環境と共生し、持続可能なまちをつくる」の5つとなっている。
(1)については、箱崎キャンパス跡地が福岡都心部に近く、大規模な土地利用が可能であり、かつ交通利便性が高いことから、福岡市の持続的な成長に貢献するまちづくりを目指すというもの。そのために、新たな産業・雇用の創出や、立地特性を活かした広域連携拠点づくり、文化・スポーツ・コンベンションを通じた交流と賑わいの創出を考えていきたいとしている。
(2)は、100年間にわたって九州大学が存在した地としてのブランドを活かしながら、充実した教育・研究の環境を生み出し、人を育てるまちを目指すというもの。(3)では、災害に強い地理的条件を活かすとともに、九州大学病院などの周辺の高度医療施設の立地を活かした医療・福祉・健康づくり環境の充実、交通アクセスの良さなどの利便性を活かした快適な居住環境の創出などを目指している。
(4)については、前回の箱崎キャンパスの課題でも触れた近代建築物の問題にも関係しているが、もっと広いエリアでとらえた箱崎のまち全体が有する歴史文化資源――たとえば千年以上の歴史を誇る筥崎宮や旧箱崎宿の町家、そういったものも含めて貴重な地区資産として活かしていこうというものだ。そして(5)は、九大の先進的な環境技術を活用し、箱崎キャンパスとその周辺にある緑・水辺と共生するまちを創造していこうというものになっている。
「跡地利用将来ビジョン」ではこれらの方針をもとに、土地利用のゾーニングなども含め、将来構想のイメージが作成されている。
九大・箱崎キャンパス跡地利用の今後のスケジュールは、業種別アンケートなどによる需要調査の実施や、各種調査や検討などの諸条件の整理を踏まえて、まず2013年度中に「跡地利用計画(案)」が作成される。その後、14年度以降で「跡地利用計画」を作成し、実際のまちづくりが進められていくことになる。
箱崎キャンパスが位置する箱崎のまちは、古くは筥崎宮を中心に千年以上の歴史を持ち、また唐津街道の宿場町としても栄えてきた地域で、1911年にこの地に創立されて以降は九州大学とともに発展してきた。今後の九大・箱崎キャンパス跡地の利用にあたっては、九大とともに歩んできたこれまでの100年の歴史とこのまちの発展に貢献してきた方々の想いを受け継ぎ、未来の若者たちにつないでいけるような、100年後の未来に誇れるまちづくりになることを期待したい。
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