【特別取材】カンボジア経済視察 超格差社会
アンコールワットに地雷とポル=ポト。そう、その国はカンボジア。近年は積極的な外国投資の呼び込みと安価で豊富な労働力を背景に安定した経済成長を遂げている。日本企業の進出が相次いでいる同国を視察し、経済を中心に知られざるカンボジアの現状と魅力を報告する。
<街を歩けば、超格差社会>
2月、カンボジアでは雨の少ない乾季。雨は降らないが、常夏の同国は気温30度を軽く超える。アンコールワットを代表とする同国の観光業にとっては、今が稼ぎ時だ。プノンペン市内のホテルには、観光を楽しむ欧米人とビジネスで訪れたアジア人がほとんどだった。
早朝、プノンペン市内を散策した。すでに市街中心部では渋滞が起きようとしていた。ガイドに尋ねると、勤務開始が7時という企業も少なくないようだ。ひっきりなしに、バイクの列が流れている。合わせて急増している自動車。プノンペン市内では、高級車の多さに驚く。最貧国とされている国で、高級車レクサスがずらりと並んだガレージ。日本をはるかにしのぐ貧富の格差がそこにある。
幼い子どもたちが路上でアクセサリーを売っていた。信号待ちのバイクドライバー1人ひとりに声をかけていた。日本でも経済格差が問題となっているが、日本とは比べ物にならない。「ほんの一部が肥え、大多数が細る」これがカンボジアの現状だ。
<デモの背景と政治に翻弄される海外企業>
労働者の反発の矛先は現与党に向けられた。2013年7月の国政選挙では、労働賃金を当時の2倍に拡大すると主張した野党が躍進。低所得者層から圧倒的な支持を得たが、僅差で政権交代は実現しなかった。しかし、与党の不正行為が取りざたされ、国際機関から選挙のやり直しを提案されるも与党はそれを無視。大規模なデモにつながった。デモにより、当面61ドルで固定されていた最低賃金は上昇し、現在は約100ドル。進出企業にとって、豊富で安価な労働力があることがカンボジアのメリットであったが、その部分においては頭を抱える製造業も多いだろう。
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