ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

未来トレンド分析シリーズ

国際特許戦争に勝ち残れるか(前)
未来トレンド分析シリーズ
2014年4月16日 14:48
参議院議員・国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 我が国は世界最高レベルの知的財産立国を目指す方針を打ち出している。年間4兆円の科学技術関連予算を投入してきた。これまで長年にわたり、科学技術をベースにしたものづくり大国として国内の雇用を創出し、海外市場においてメイド・イン・ジャパンの評価を高めてきた日本であるが、今後はそうしたものづくりのベースの上にソフトパワーを加える時代に突入したと言えるだろう。STAP細胞に関しては疑念が生じているが、iPS細胞の医療への応用には大きな期待が寄せられている。これも科学技術イノベーション戦略の成果といえよう。

 とはいえ、課題も多い。グローバル化が進むなか、日本企業の国際競争力が低下することは由々しき事態である。成長産業に欠かせない技術の流出を防ぎ、模造品対策を強化するためにも、特許として守るべき技術やアイディアは日本国内の権利化だけでは不十分となっている。

b_9.jpg たしかに、我が国企業による国際特許出願件数は2012年までの10年間で2.5倍に増加。しかし、欧米企業と比較すれば、見劣りするばかりだ。なぜなら、自国に出願している特許のうち、海外にも出願している比率で見れば、アメリカが53%で、ヨーロッパが47%であるのに対し、日本は29%に留まっているからだ。しかも、中国や韓国の特許出願数は急増しており、とくに、中国はアメリカを抜き去り、11年には特許出願数で世界一となった。12年には、世界シェアの4割を占める勢いを見せている。注目すべきは、特許出願料に関して言えば、中国や韓国の方が日本より安いという点であろう。
 意匠登録出願件数で言えば、中国が66万件と圧倒的である。韓国ですら6万5,000件であるのに対し、日本は3万2,000件に過ぎず、欧米のみならず、アジアの新興国の後塵を拝する状況に甘んじている。また、商標登録出願件数でも、中国は140万件とダントツで、日本は10万件に過ぎず、中国の10分の1にもおよばない。

 では、どこに問題があるのであろうか。我が国の知的財産を保護するという観点から言えば、現場の特許庁に働く審査官の数は諸外国と比べて少ないことも一因と思われる。
 具体的に言えば、我が国の審査官の数は約1,700人である。対して、アメリカは約7,800人、中国においても約5,700人となっており、これでは国際的にスピードアップする「特許審査ハイウェイ」競争に遅れてしまう。特許に関する早期審査体制を確立し、我が国の知的財産を守っていくためには、必要な専門家の増強が焦眉の急と言えるだろう。

 また、これだけ少ない人数で膨大な量の特許審査を行おうとすれば、どうしても無理が生じる可能性が高くなる。実際、特許が付与された後の異議申し立ての現状を見ると驚かされてしまう。というのは、7割以上の特許が、異議申し立てにより訂正や取り消しが行なわれているからである。2003年次の審査結果に基づく特許制度小委員会の報告書によれば、異議申し立て件数が3,055件出され、そのうち特許が維持されたものは671件に過ぎなかった。

 実は、現在においても、瑕疵のある特許権が高い割合で存在することが指摘されており、この問題を改善するためにも有能な審査官の増員が欠かせないと思われる。この問題を改善するため、特許法を一部改正する法案が国会での審議を経て成立したところである。これにより、特許異議の申し立てについても、簡易で迅速な手続きを通じて関係者の調整を図れるような仕組みが新たに加えられることになった。
 とはいえ、いくら優秀な人材を配置したとしても、7割以上が覆ってしまうという現状を鑑みれば、今後は人間の能力を補うという意味でデジタル情報の活用が必要になるのではなかろうか。要するに、特許申請に関する情報をデジタル化することにより、特許の独自性がどこまで確認できるかをスピーディーに判断できるような仕掛けを加える必要があることは、火を見るより明らかだ。

 こうした対策を講じることで、これまで以上に知的財産立国の名前に恥じない体制が確立するに違いない。現在も類似の特許案件について、検索できるシステムの構築や特許情報全体をデータベース化する試みも重ねられてきているが、全体的なシステムとして諸々の課題に対応できる水準にまでなっていない。その一方で、意匠とか商標の世界においては、新たな動きが見られるようになってきた。たとえば、色彩とか音といった新しい種類の商標を保護の対象にしようという動きである。

(つづく)

| (中) ≫

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

独自の切り口で福岡・九州の今を伝えるニュースサイト
 ※最新ニュースはコチラ⇒NET-IB トップページ


※記事へのご意見はこちら

未来トレンド分析シリーズ一覧
未来トレンド分析シリーズ
2014年4月17日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年4月16日 14:48
未来トレンド分析シリーズ
2014年3月20日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年3月19日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年3月18日 15:27
クローズアップ
2014年3月12日 07:00
クローズアップ
2014年3月11日 09:00
クローズアップ
2014年3月10日 09:00
クローズアップ
2014年3月 7日 07:00
クローズアップ
2014年3月 6日 13:47
未来トレンド分析シリーズ
2014年2月25日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年2月24日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年2月21日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年2月20日 10:33
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月29日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月28日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月27日 13:32
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月24日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月 6日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月 5日 07:00
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
流通メルマガ
純広告VT
純広告VT
純広告VT
ピックアップ
宅配水業界、4月22日に初の交流展
経済
2014年4月16日 11:18
木村秋則氏が説く「自然栽培」
イベント情報
2014年4月14日 14:01
博多座「ショーのみチケット」販売
耳より情報
2014年4月11日 15:34
ドラえもんが博多駅前を占拠?!
文化・スポーツ
2014年4月 9日 15:47

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル