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濱口和久「本気の安保論」

日本に危機をもたらす『力の空白』
濱口和久「本気の安保論」
2014年4月30日 11:27
拓殖大学客員教授 濱口 和久

<米比が新軍事協定に署名>
jyarimiti.jpg 4月28日、オバマ米大統領とアキノ比大統領が会談し、フィリピンでの米軍派遣拡大を可能とする新軍事協定に署名した。会談では、中国の南シナ海への進出を牽制し、安全保障での協力関係が確認された。新協定によって、フィリピンは中国への抑止力を強め、米国も南シナ海での存在感を高めることになる。

 近年、フィリピンは中国の脅威に対抗すべく、米国との軍事関係の強化に乗り出していた。1999年に、米軍との合同軍事演習を可能とする「訪問米軍に関する地位協定(VFL)」を新たに締結し、2002年から約600人の米兵が南部ミンダナオ島に駐留している。

 11年10月には、米海兵隊とフィリピン軍の合同軍事演習をクラーク米空軍基地跡などで実施した。同年8月、フィリピン海軍最大となる米国製フリゲート艦を新たに2隻購入。アキノ大統領は、同艦の配備式展で「潜水艦の購入も検討している」と発言するなど、米比軍事協力だけでなく、自国の軍事力の増強にも取り組み始めていた。

 今回の協定署名によって、米軍はフィリピン軍の基地内独自の施設を建設できるようになり、航空機や艦船の巡回を拡大する。

<「南シナ海」から得るべき教訓>
 今日、南シナ海における中国とフィリピンをはじめとするASEAN諸国との対立・緊張関係を作り出した原因の1つが、フィリピンにあった世界最大級の在外米軍基地(スービック海軍基地・クラーク空軍基地)からの米軍の撤退である。

 1991年、フィリピン国内で反米感情が高まるなか、フィリピン上院は両基地の使用期限の延長を否決した。当時、安全保障の専門家の多くが「フィリピンの戦略的位置からして、米軍が簡単に基地を返す(撤退)ことはない」と見ていた。ところが、米国はフィリピンと再協議をすることもなく、翌年には米軍が撤退してしまった。

 その結果生じた『力の空白』につけ込むかのように、中国が南シナ海に進出してきた。そして95年、中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾が領有権を主張している南シナ海の南沙諸島のミスチーフ環礁を、中国は占拠してしまったのである。

 フィリピンは、南沙諸島周辺海域を航行中の中国漁船を領海侵犯として拘束するなどの報復に出たが、軍事行動をちらつかせる中国に対してなすすべがなかった。99年に入ると、中国はミスチーフ環礁の軍事要塞化を進め、あっという間に南沙諸島(スプラトリー諸島)を占領してしまった。当然、フィリピンは中国に対して抗議したが、後の祭りで、南シナ海の拠点を中国にみすみす奪われてしまったのである。

 南沙諸島の領有権問題は、日本にとっても無縁ではない。日本が中東から輸入している原油の80パーセントはマラッカ海峡、この南沙諸島周辺海域を通過して入ってくる。そのため南沙諸島周辺海の治安維持は、日本のシーレン確保の上のうえでも重要な地域なのである。

<『力の空白』を埋める陸自の与那国配備>
 中国は2012年から尖閣諸島を「中国の核心的利益」と主張し始めていることは周知の通りだ。「核心的利益」とは、中国の安全保障問題のなかで譲歩できない国家利益を意味する。台湾、チベット、新疆ウィグルのほか、南シナ海も対象としている。 すでにチベット、新疆ウィグルは事実上、中国に編入されたと同じ状態だ。南シナ海もこのままいけば同じ運命を辿る一歩手前であったが、米比の新協定署名で中国の出方が注目される。

 一方、日本も中国に対抗するための新たな動きを始めている。台湾と海を挟んで国境を接する日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)で、4月19日、陸上自衛隊の沿岸監視部隊が常駐する駐屯地施設の起工式が行なわれた(朝雲新聞4月24日付)。

 沖縄県内の自衛隊駐屯地・基地の設置は昭和47(1972)年の本土復帰以来、初めてとなる。沿岸監視部隊は平成27(2015)年度末までに約150人規模で新編される予定だ。同隊は情報科職種の隊員を主力として、付近を航行、飛行する艦船や航空機をレーダーなどで監視、各種兆候を早期に探知する任務を担うことになる。

 起工式に出席した小野寺五典防衛大臣は、挨拶のなかで「南西地域での自衛隊配置の空白を埋めるもので、部隊が担う役割や意味は大きい」と述べた。与那国島には、今まで武器といえば、沖縄県警の駐在所員が携行する拳銃2丁しかなかった。中国人民解放軍が不法上陸してきた場合は、ほとんど手も足もでない状態であったが、沿岸監視部隊の設置で、与那国島の環境は大きく変化することになるだろう。

 また、駐屯地内には航空自衛隊の移動式警戒隊(約50名程度)が展開可能なスペースが設けられ、陸上自衛隊の沿岸監視用の固定式警戒管制レーダーの換装・修理時の運用を担い、同レーダーが補足困難な覆域をカバーする。

 「尖閣諸島を第2のクリミヤにするな!」(4月23日付・濱口和久「本気の安保論」)でも述べたが、日本は、与那国島をはじめとする南西諸島全体の防衛体制を強化することによって、この地域の『力の空白』を埋めることができる。あわせて中国の不法な行動を阻止することに繋がるのだ。


<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。現在は、日本防災士機構認証研修機関の(株)防災士研修センター常務取締役。著書に、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。11月25日には、夕刊フジに連載中の企画をまとめた『探訪 日本の名城 上-戦国武将と出会う旅』(青林堂)を発売。公式HPはコチラ


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