中国では幼児など「子ども」が出てくる番組に人気が集まる。中国の紅白歌合戦こと「春晩聯会」でも、子どもの歌謡やダンスが披露される。日本では「子役」など、それを職業とする子どもの出演はあるものの、安全面などの観点から一般の子どもがテレビに出ることは少なく、中国とは対称的だ。
中国・杭州にある浙江テレビで放送されている「爸爸回来了(お父さん、お帰り)」は、「子育てバラエティ・ロケ番組」というジャンルにある。登場するのは有名男性歌手、俳優、スポーツ選手と、自身の2歳前後から5歳前後の子どもたちだ。ペアで数組が登場、それぞれに各部屋の数カ所にカメラが備え付けられた住居を与えられ、各父子の様子を撮影。のちに一つの番組に編集されて同時進行のようにして放送される。それぞれ「母親が用事で出かける」という設定で、父親が2泊3日の子育てに励む。料理を作り、遊ばせ、風呂に入れ、就寝させる。母親がいないことで泣き出す子ども、風呂で耳に水を入れてしまい号泣する子ども、言うことを聞かない子ども、そしてそれを四苦八苦しながら奮闘する父親・・・。翌日は朝食を作り、小旅行に出かける。3日目の朝、母親が戻ってくると、子どもは泣き出し、母親も泣き出す。それを見て、他人の子どもなのに、なぜか視聴者も「泣き出す」のである。一方で、「誰?」という意外なリアクションを見せる子どももいたりして、様々な表情も番組の見どころの一つだ。
中国にはこの手の番組が数年で激増している。「爸爸去哪儿(お父さんどこに行ったの)」と題した湖南テレビの番組も大陸中で大ブレイクした。日本の視聴者が「はじめてのおつかい」での子どものドタバタ劇に吸引されるのと似たような仕組みである。
父子のドタバタが視聴者にうけているのには背景もある。それは、一人っ子政策の影響で少ない「子ども」に対して過大な愛情が注がれ始めたこと。また、注がれる愛情に共感を持つ人が少なくないということ。日本同様に、中国でも父親の育児参加という潮流が来ていて、興味が持たれているということ。さらには、離婚率の上昇で「男性が一人で子どもを育てる」という家庭も増えていることなどが挙げられる。
日本では「有名人の親子が一緒に画面に登場する」ことはほとんどないが、五輪でメダルを獲得した元体操選手・李小鵬氏とその子ども、台湾人気アイドルユニット飛輪海の歌手・呉尊氏とその子どもなど、中国では著名人が惜しげも無く、わが子の顔も名前も登場させている。父子バラエティのブームは火が消えそうも無く、今後も続きそうだ。
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