都市には摩天楼より潤いを

━━　現福岡空港の移転と新空港建設を要望する立場からは、福岡空港が都　　心部にあるために、天神・博多駅周辺への建築に高さ制限が設けられ経済的損出が大きいという声があります。

県議／　高層建築を中心に都市計画を考えるような、いわば量的拡大を念頭にした時代はやがて終焉を向える。今後の都市開発は質的深化を求めるものへと変わるのが必然だ。

　天神と博多駅地区のビルの高層化とは単純に物と人を量として溢れさせる話だが、そのような事よりも、今後、行なわなければならない都市の質を深化させるための事業はごまんとある。

　例えば、ヒートアイランド対策だ。都市中心部から吐きだされる熱で都市圏全体が高温化しているわけだが、福岡市は天神・博多駅地区などの都心部の方が温度が低い、というような都市構造を目指すことなどが、一つとして考えられる。

　それは、ヒートアイランド現象に悩む世界の都市に福岡市が対策のモデルを示すことになる。また、質的深化という都市建設の新たな方向性を世界に提示することにもなる。

　これらの事業を進めていけば、そこには新たに都市を建設するほどの投資が必要となり、福岡空港の代替空港建設などとは比べものにならない大規模な経済効果が望める。

　いづれにしても、ビルの高さに制限があるために、新たな空港が必要というような論議は直面する環境問題から文明の転換を迫られているという人類が置かれた歴史的位置からも見ても、また経済の今後から見ても卑小な論議だ。

━━　それでは、空港問題を考える上で、どのような観点をおもちですか。

県議／　空港をどうするかという問題は今後の都市建設をどのような方向で考えていくかで随分違う。

　これから先の都市建設をどのような方向で行なうかというテーマを考える時、念頭において置かなければならない課題が大きくは3点ある。

　人類共通の課題としては環境問題だ。日本国内の課題としては少子高齢化による急速な人口減少だ。そして、福岡都市圏の事情としては、アジアにおける政治・経済環境が激変するなかで競合していかなければなければならない位置にあるという点だ。

　人口の減少に合わせて都市の量的縮小を図りながら、持続可能性を実現する環境対策を含めた都市機能の質的深化を押し進め、人が住むという点ではポテンシャルを向上させる。

　一方で、激変する対外環境に対応して整備が必要な社会資本については、資本を集中し一挙に整備し対応することだ。

　空港の整備は、まさにこれに当る。選択と集中。スピードとタイミングが求められている。福岡空港の代替空港を建設しようというような、縮小してしまった論議から離れて、アジアの都市間競争に対応する重要な社会資本としての整備が緊急に求められている。