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未来トレンド分析シリーズ

排出権取引ビジネスに群がる環境投資ファンドの思惑買い(5)
未来トレンド分析シリーズ
2010年1月 9日 08:00
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 別の問題もある。即ち、排出権価格の変動だ。排出権を最も必要とする主な国は日本とイギリスといわれるが、買い手が少なければ排出権も安く買いたたかれる可能性は避けられない。例えば、EUの排出権取引市場では2008年7月に1トン当たり約30ユーロの価格を付けたのがピークであり、その後下落が続き、2009年12月時点では13ユーロ前後で低迷を続けている。

 こうした低価格が続けば設備投資の足を引っ張る事態も想定される。なぜなら、余剰排出量を売却して得られる利益よりもCO2削減のための設備投資の方が高くなってしまうからである。

 このような状況を踏まえ、排出権価格を上昇させるためには温室効果ガスの削減目標のハードルを高くすべきとの意見も出てきている。厳しい削減目標を科すれば当然、排出権の需要は増大し、おのずと価格も回復すると考えられるからだ。と同時に、国際的な排出権取引市場を拡大することで、この新興マーケットを強化すべきとの声も出ている。

 いずれにせよ、ゴア氏が関与する投資ファンドをはじめ世界の投機的資金が、この排出権取引市場に群がり始めていることは否定しようのない事実である。実需に基づかない形で、投資家の思惑で価格変動が大きく変動することもあり得る。新たなカーボンマネーの市場における監視体制を準備しておくことが必要であろう。さもなければ、マネーゲームに踊らされる企業や投資家が大やけどを負うことも危惧されるからだ。

(了)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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