したがって、供給者、消費者の双方に、権利と責任があるわけです。供給者は消費者の言い分を聞いて、決断の参考にすることがありますが、必ずその通りにやる必要がありません。消費者も供給者が提供してくれるものを比較したうえで、予算の範囲内で、いつ、どんな物件を買うか、自分の意思で自由に結論を見出します。一方的に相手のやりかたを責めるのは、不適切ではないでしょうか。
たとえば、私たちは出かける時、選ぶ乗り物に対して、いろんな選択肢があります。バスや電車や飛行機など、どれでも利用できます。また、電車のなかでは、普通電車、快速、特急、新幹線などの選択ができます。新幹線が高いからという不満を持ち、外出しない人はあまり見当たらないでしょう。利用者は自分の条件に見合った交通手段を選びます。節約するなら普通電車で行く。旅の時間が長くなりますが・・・。
一方、鉄道会社がプロデュースするサービスは、市場競争のなかで生み出されます。そのサービスを利用者に認めてもらえるか、どれほど認められるかは、利用者の人数と利用される頻度で分かります。それは、市場競合における双方の選択があってのことです。
同様に、上海の不動産も様々な選択肢があります。新築もあれば、中古もあります。別荘もあれば、マンションもあります。内装済みの物件もあるし、内装が無いの物件もあります。
デベロッパーがグレードを分けて、さまざまな種類の商品を作るのは、個々の消費者の購買力や嗜好が異なるからです。もちろん、全社会の人々をターゲットにしていませんし、自社商品がすべての人たちに愛されるとは想像すらしていないでしょう。あくまでも特定の消費者に対して、こだわりに溢れる物件を、それなりの価格で提供する。当然ながら、対象の相違によって、価格帯も異なってきます。
一方、消費者の考え方もそれぞれです。今の中国は、もう30年前になりますが、改革開放路線を始めた頃とはかなり変わりました。平均主義だった社会に、激しい格差が生じています。一般的に、年齢とともに収入が増える一方、若い人も自分の才能や努力次第で、金持ちになる時代に突入しています。
昔の人たちは素朴な生活に対し、簡単に満足しますが、現在の労働世代には、よりよい生活を享受したいという傾向が見られます。自分が貯めているお金でマンションを買いたい人がいれば、借金をしてまでも広い住まいが欲しい人もいます。少しでも早く住まいを購入し、幸せな生活を送りたい人もいれば、将来の夢として抱きつつ、購入を我慢する人もいます。
同時に上海は、今や地元の人々だけの上海ではありません。中国全国ないし"世界の上海"になりつつあるのです。四方八方から来た人たちが市場に参入しています。現在は、中国の法律に基づき、外国人でも上海の物件を売買できるようになっています。消費者の輪が広げるに伴い、求められる商品やサービスもますます多種多様になるでしょう。
むしろ、市場経済の角度から見れば、今日までの物件価格の上昇は、供給と需要がぶつかりながらバランスを取ってきた一種の結果ではないかと思えるのです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。