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上海最先端レポート

貧富混合居住(下)~日本人が知らない中国事情(55)
上海最先端レポート
2010年8月31日 08:00
劉 剛

<北京市>

 市内のある住宅団地は、10年前までは畑だったのですが、都市開発にともない、周辺でオフィスビルが相次いで建てられたほか、別荘やゴルフ場も作られました。この住宅団地の半分が、近くに通勤するホワイトカラーなどの富裕層に「商品住宅」として販売され、残りの半分は、「経済適用房」として地元住民に与えられました。地元住民には、農家の人が多いのです。

住宅団地 そこでは、生活習慣が違うことでトラブルが起きています。たとえば、農家には、結婚式後の宴会や葬式後の会食が住宅のそばにある空き地で行なわれる風習があります。したがって、住宅団地内では、たびたび盛大なパーティーのような催しが見られます。何日か連続で朝から晩まで騒いで、「商品住宅」居住者に影響が出ることは、止むを得ないことなのです。しかし、それを理由に、「商品住宅」の居住者らが、住宅管理費の支払いを拒否するまでに事態はエスカレートしています。
 また、周辺にある飲食店の店主も悩みを話してくれました。本来、このあたりには集客力があって、店経営にも有利な要素になっていたのですが、2種類の住民の消費理念や嗜好にあまりにも隔たりがあり、なかなか双方に納得してもらえるメニューを作り出せないそうです。
さらに、「商品住宅」と「経済適用房」の管理費用が違うので、異なるサービスを提供することになり、新たな紛争の糸口になりうると、不動産管理会社のスタッフが心配しています。

 「市内中心部の物価上昇や生活コスト増加に合わせて、貧困層が自然に少しずつ郊外に移っていくだろう」と、ある不動産開発業者の社長は予想しています。

<政府関係部門の本音>

 調和の取れる社会に向けた政策の一環として、政府関係部門が「貧富混同居住」の構想を練っています。その構想とは、以下のようなものです。

1.収入が異なる家庭でも、同じ公共サービスを享受できるようにします。もし、大規模な専用「保障房」団地を建設するのであれば、中心部のスペースが限られているので、離れた場所に行かなければいけません。言うまでもなく、そういった公共サービスはいまだに行き届いていません。

2.混同居住にすることで、低所得層にモデルを与え、より多くの就職の機会を見つけられるように、政府が心がけています。

3.違う収入層の人々が隣接して住むことによって、お互いの理解や信頼を深めながら、貧困層に対する関心や気付きを高める狙いがあります。

<海外の実践>

 フランスの一部の大都市では、富裕層団地と貧困層団地がはっきりと分けられ、貧富が激しく対立し、社会衝突が起こったこともあるそうです。そこで、フランス政府は「都市更新計画」を策定。住宅団地ごとに20%の「福祉住宅」(低所得層向けの住宅)を設けることが、規定として定められました。

 イギリスでは、1970年代に集中的に建設された「保障房」団地が高失業率や高犯罪率の温床になっているため、2007年から、新規住宅団地を作る際には必ず一定の低コスト住宅建設を義務付けると、政府が解決を図っています。

(了)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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