太陽光パネルメーカーのソリンドラ社(カリフォルニア州)が8月31日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を発表した。すでにカリフォルニア州の工場は操業を停止しており、従業員も解雇。今後は事業の売却や他社への技術供与への道を探るという。ソリンドラ社の倒産で、米太陽エネルギー関連メーカー3社が1カ月のうちに倒産したことになる。
ソリンドラ製品は、ビルや商業施設に設置する円筒状の太陽光パネルである。直射日光だけではなく散乱光・反射光もすべて捉え、風や光を通すことが最大の特徴だった。発電効率の高さに加え、従来の太陽光パネルに比べ簡単に設置できることから注目を集めていた。2009年には米エネルギー省から約410億円の融資保証を受け、新工場を建設。10年5月にはオバマ大統領が来訪し、景気対策の成果としてアピールするなど、環境関連分野を景気対策と位置付けたオバマ政権を象徴する企業の1社でもあった。
このソリンドラ製品は、日本でも広がりを見せ始めていた。エコホールディングス(神戸市)は、米サンエディソン社よりソリンドラ製品の日本国内においての正規販売権を取得したと、2011年7月23日に発表。大阪大学の先端科学イノベーションセンターと産学連携の共同プロジェクトとしてソリンドラ製品の普及を推進し、同時に全国で特約店の募集を行なっていた。
太陽光発電ビジネスに対する市場拡大との期待感と、円筒形のモジュールという目新しさ、従来と異なる簡易な施工システムの魅力を感じ、新事業として興味を持っていた企業も多い。福岡の業界関係者からも「最近はよくソリンドラの名前を聞いていたし、実際にバッティングすることもあった」との声が聞かれた。検討段階にあった企業に実害はないだろうが、すでに事業としてスタートしていた企業には痛手である。エコホールディングス社は、基本的にソリンドラ製品の取り扱い姿勢および今後の活動状況に変化はないとして、充分な在庫も有り販売活動を継続するとしているが、ソリンドラ社の行方が定まらない状況では先行きの不透明さは拭えない。
ソリンドラ社は中国メーカーとの競争で業績が悪化したと言われる。日本市場も同じような状況に陥る可能性は十分ある。太陽光発電ビジネスに参入するならば、市場拡大の可能性に目を奪われず、そうしたリスクも細かく見ておく必要があるだろう。
【緒方 克美】
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