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特別取材

"悠香問題"から見えた広告代理店業界のウラ(中)
特別取材
2011年11月15日 07:00

 "悠香問題"がクローズアップされるなか、広告代理店および媒体社(新聞社やテレビ局など)に対しても、その責任を追求する声が上がっている。しかし、当の広告代理店業界は、食品の成分や副作用までは関知できないと言わんばかりに、"我関せず"の姿勢を取っている。広告代理店が取り扱う多くの企業のなかには、いわゆる問題企業もある。そして、それらの企業に対しては、今回の悠香の件と同じような姿勢を貫いている。本当にそれで良いのか―。この問題を検証した。

<命に関わる危険性悠香『茶のしずく』>

 前述の2社とは違い、悠香は当初から「消費者を欺く」という悪意を持っていたわけではなかった。悠香は、厚生労働省が昨年10月15日付で、小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品の使用者に対する注意喚起を行なったことを受け、12月8日以降に発売の『茶のしずく』では小麦加水分解物をシルク由来のものに切り替えた。その際、顧客にダイレクトメール(DM)や電話により回収を呼びかけたのにも関わらず、テレビCMを流し続けたことで被害を拡大させてしまった。結果として、悪いと知ったうえでテレビCMを抑止しなかった同社の責任は大きい。また、平成電電と近未來通信の2社の被害にあったのは金銭的なものであり、命の危険ではない。しかし、悠香の小麦アレルギーはアナフィラキシーショックを誘発し、発作で動けなくなるほか、最悪の場合は命を落とす危険性も指摘されている。そのため、上記2社よりもその社会的責任は重大なものであると言える。

 10年2月、前述の平成電電の出資募集広告を掲載した責任があるとして、平成電電の出資者430人が広告を掲載した読売新聞、朝日新聞、日経新聞の3社に対し、26億5,000万円の損害賠償請求を求める裁判が行なわれた。しかし、東京地裁はそれを棄却。当裁判ではメディア側(新聞社側)が広告内容を調査すべきだったという原告の訴えにどのような司法判断を下されるか注目が集まったが、最終的には「広告審査が不十分だったとは言えない」として、原告側の請求が棄却されたのだ。悠香のケースでも被害者弁護団が発足し、今後、係争になることはほぼ間違いないと見られているが、生命の危機を脅かす行為とも取れるテレビCMの垂れ流しに、どのような司法判断を下されるか注目が集まるだろう。

<今回の問題はそれ以前の問題>
 悠香事件を受けて、福岡市内のとある健康食品および通販会社の広告を取り扱う広告代理店担当者らに話を聞いた。そこで皆、口をそろえたのは「薬事法は気を配るが、(今回の悠香の問題は)それ以前の問題であり、我々の手では関知できない」(A社)ということだった。また、クライアント企業の与信情報は確認するものの、「商品に関しては相手を信用するしかない」(B社)という答えもあった。

 「現在、広告代理店もメーカー側も商品を販売する時は契約している調査機関に依頼し、薬事法に抵触しないか、または誇大広告にならないかというチェックは行なっています。しかし、薬事法の確認のほかは、焦げ付きたくはありませんので、取引先企業の与信は調査しますが、商品の成分や製造方法などまで厳しく監視・調査していたら、従来の2割の手数料収入だけでは採算が合わなくなってしまいます」(B社)と現実的な話となる。

 悪く言えば、"商品に関しては知ったこっちゃない"といった、一見無責任とも取れる返答だ。しかし、その背景には、広告代理店の苦しい事情も垣間見える。従来の食品会社や自動車会社などのスポンサーと比べて、費用対効果を重視する健康食品・雑貨を中心に取り扱う通販業界に属する企業はとてもシビアで、「代理店の見直しは日常茶飯事」という指摘もある。従来の広告代理店の付き合い方では対応に苦慮する部分が多くある。

 「かつては、通販業界メディアの扱い方も低く見られていました。しかし、景気が悪化するにつれて、従来のスポンサーの広告費用が削減されるなか、広告費用を潤沢に持つ通販業界は一目置いた存在になっています。エバーライフでさえ一時期は広告をバンバン打って、年間50億円の広告費を使っていたと言われているほどで、福岡の地元有力企業がゴルフコンペなどを行なおうものならば、全国のキー局および広告代理店の幹部らが参加するほどの関係となっています」(B社担当者)と、一見活況そうに見えても、厳しい競争のなかで取った取られたを繰り返しているのである。

【矢野 寛之】

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