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SNSI中田安彦レポート

「日本のギリシャ化」を進める、民主党の増税一本槍政策(1)
SNSI中田安彦レポート
2012年2月 2日 16:00
SNSI研究員 中田 安彦 氏

<ディープ・セキュリティ>
sora_2.jpg 今年(2012年)は、マヤ暦では「世界の終わり」とか、「これまでの世界からの一新」が5000年に一度行なわれる年に当たるらしいが、今年の元日に日本で起きたのは、東北地方と関東地方を襲ったやや大きな地震だった。1月の終わりに近づいて、今度は28日に富士五湖直下の震源でマグニチュード5.4の、東京地方でもドスンと感じられるほどの大きな地震があった。いずれも、去年の東日本大震災とはまったく比べ物にならないし、被害もほとんど出ていないが、ここ最近の地震の多発は年初からあまり縁起が良いものではない。

 また、同じ時期に東京大学地震研究所が「マグニチュード7クラスの(南関東)首都直下型地震が4年以内に発生する確率は70%」と発表した。これまでは、政府の地震予知連が「東南海地震の30年以内の確率は70%程度」と発表していたが、首都圏直下型地震は東大に言わせれば4年以内に発生する可能性が高いという。もちろん、地震学会における地震予知というのは研究予算目当てに行われているのであって、余地はそもそも当たらないという批判もある。
 ただし、東日本大震災で言えば、政府の地震予知連は、去年のはじめの段階で宮城県沖地震に関して「長期予測評価で今後30年以内に99%の高い確率で発生する」と想定していた。その意味で言えば、東日本大震災は宮城県地震を含んだより広範囲で起きているが、予測は当たったということになる。

 年末年始に読んだ本に、ジョゼフ・クーパー・ラモというアメリカの政治学者の『不連続変化の時代』(講談社)というのがある。著者のラモは、キッシンジャー・アソシエイツの幹部だが、この本によると現代の世界は「想定外危機(Unthinkable)の時代」ということである。ラモによれば、現在の予測の能力を持ってしては、危機が起きる可能性があることまではある程度の範囲で予測できるにしても、それが確実にいつ起きるのかは予測しがたいという。

 ラモは、「システムの規模がある大きさになると、不安定な"臨界"状態に達することが多い。そうなると、さまざまな混乱が生じ、砂の山の崩壊のような現象が起きる」と語っている。それはちょうど、砂の粒を落とし続けていったときに、砂の山がいつ崩壊するかが予測不可能であると同じイメージで語られる。このような世界は、「意味のない偶然性」に溢れているばかりではなく、ただ新しい思考法を必要とする、とラモは言う。いかなる種類の人間も、ある程度の合理性に基づいて行動する。しかし、それはこれまでに起こったことの経験則から来る「限定合理性」であり、砂の山の崩壊の予測不可能な事件には対処できない可能性が高い。ラモが言っているのと同じことを、アメリカの投資家であり、リーマン・ショックを予測した、ナシム・ニコラス・タレブは「ブラック・スワン」という言葉で表現した。

 つまり、「砂の山はいつかは崩壊する。しかし、それがいつになるかはわからない」という現実に直面して取るべき方法は、「崩壊を避けるために無駄な努力をする」のではない。「崩壊することを前提に動くということだ」とラモは言う。これが、ラモの言う「ディープ・セキュリティ」という概念で、「脅威は封じ込めるものという考えを捨て、その代わりに自分たちの社会をより弾性のあるものにして、衝突時の衝撃を少しでも弱めるようにすること」が重要なのであるという。

(つづく)

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<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

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