<着々と進む中国の海洋制覇計画>
中国は米海軍の西太平洋への接近を阻止し、領域への介入を拒否する戦略を採用しており、そのための戦力を急速に整備しつつある。米国は、それを接近阻止・領域拒否(A2/AD= aniti access/area denial )戦略と名付けている。
この流れに沿うような形で、他国領土、領海、公海に関係なく、中国海軍は有事の対米防衛ラインとして設定した『九州―沖縄―フィリピン―ボルネオ島を結ぶ第1列島線』と、『伊豆諸島―小笠原諸島―グァム―サイパン―パプアニューギニアを結ぶ第2列島線』の制海権を確保する海洋覇権の体制を確立しつつある。
2007年の米国防総省議会報告は、中国の海洋覇権のスケジュールを次のように分析している。
2000年までに中国本土沿岸海域の防衛体制を確立する。2010年までに第1列島線内の制海権を確保する。2020年迄に第2列島線内の制海権を確保する。2040年までに米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止する。2040年には米海軍と対等に戦える海軍を建設する。
<米中による太平洋2分割論を唱える中国>
2008年3月の米国上院軍事委員会の公聴会で、米太平洋軍司令官のキーティング海軍大将が07年5月に中国を訪問した際、会談した中国海軍幹部から、ハワイを基点として米中が太平洋の東西を「分割管理」する構想を提案されていたことを明らかにした。
同司令官によると、この中国海軍幹部は、「我々(中国)が航空母艦を保有した場合」として、ハワイ以東を米国が、ハワイ以西を中国が管理することで、「合意を図れないか」と打診したという。
中国海軍幹部が主張するような事態になれば、日本の命運は中国が握ることになる。中国の海洋進出の動きを考えれば、決して夢物語で終わる話ではないということを、日本国民は認識しておくべきである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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