空間をプロデュースし、そのブランディングをする。(株)シェルフアソシエイツ代表にして九州大学知的財産本部客員教授の坂口敬司氏は、一級建築士および一級建築施工管理技士の資格を持つが、その業務内容は設計や建築に留まらない。これまで得たノウハウを駆使し、マーケティングやプロモーションなど、多角的な視点から価値ある空間を築いている。アジアの交流都市として、今後、国内外からもますます注目が集まる福岡で活躍する。そんな、今、注目の"仕掛け人"に話を聞いた。
――現在のシェルフアソシエイツでの業務を考えて逆算すると、順調に必要なキャリアを積み重ねているようです。
坂口敬司氏(以下、坂口) 環境に恵まれていたというのは確かにそう思います。また、電通九州時代に2年間ほど九州大学に出向させていただいたのですが、そこでの業務も非常に刺激的でした。ユーザーサイエンスという分野を確立するためのプロジェクトに携わっていました。
――ユーザーサイエンスとは聞きなれない言葉です。
坂口 簡潔に説明すると、心理や脳科学など、そういうったアカデミックな部分もそうですし、マーケティングでユーザーを捕まえるという意味合いもあります。ロボティクスと人間の感性をテーマとするプロジェクトもありました。
――追求する分野の最先端を開拓していたのですね。
坂口 そこには内部の研究者の先生や、メーカーからの出向者、私のような代理店の人間など、まさに異業種の人間がひとつの組織のなかで同じ目的に向かっていました。メーカーの人はメーカーの発想ですし、研究者は研究者の目線。そういうなかで、自分は今後どういうものを目指すべきなのか、ということをとても考えさせられた時期でもありました。
――そして、プロジェクトが終わると同時に電通九州に戻られた。
坂口 九大のプロジェクト自体は5年間続きました。私は特任助教授という肩書きで、2年半くらいは九大の職員というかたちで働いていました。その後は、一旦電通九州に戻って、軸足は電通九州に置いたまま、今度は客員教授というかたちで関わっていました。そういう5年間でした。
――起業しようと決意されたのはいつ頃になりますか。
坂口 九大の出向から戻ってきたころには、かなり具体的に考えていました。退職する1年前の話です。空間のブランディングというところに現在も含めて一貫して興味がありますし、それを追求したい。空間というのは、単に施設っていう捉え方もできますし、地域っていう意味合いもありますし、もしくは街ということでも良いのです。地域が活性化するとか、住んでいる人が生き生きと暮らしているというのも一種のブランディングだと思います。
そこまで考えると、観光も含まれるかもしれないし、その地域での人々の営みや産業もひとつの要素になってくると思います。やっぱり街を構成しているのは、そこに住んでいる人だと思います。食事だったり、エンターテイメントも含めて、その街を構成しているのだと思います。もちろん、過去からの積み重ねや歴史も無視できませんし、そういうルーツにこそ、未来を考えるヒントも隠れています。
――では、現在のシェルフアソシエイツでの業務内容について教えていただけますか。
坂口 まず、空間開発と事業開発のコンサルティングやプロデュースが50%を占めています。さまざまなプロジェクトの相談があったときに、組み立てるのが仕事です。クライアントは個人だったり企業だったりするのですが、立ち上げのお手伝いが主になります。それと、設計やデザインも当然します。この割合は20%程度です。最近のプロジェクト相談内容の事例を挙げると、太陽光発電パネルを使ったエコスマートシティづくりをお手伝いさせていただいています。
あとは、農業の六次産業プロジェクトもあります。これは地元の農業や行政の関係者と着手し始めたところです。象徴的な場所を再生したり、観光的な要素を入れたり、実際に農作業を体験できるようにしたり、または加工食品や堆肥を作ったりとそういうことです。
現段階の構想では、例えば、休耕地の活用や、民家の空き家を民泊できるようにしたり、もしくは農業をやりたい人に貸し出せるような仕組みをつくるとか。あとはお互いに助け合うために、融通できる地域通貨のようなものを作ってみるとかを考えています。そういうアイディアをたくさん盛り込んで行きたいと考えています。
<COMPANY INFORMATION>
■(株)シェルフアソシエイツ
代 表:坂口敬司
所在地:福岡市中央区赤坂1-14-22 センチュリー赤坂門ビル4F
設 立:2010年5月
資本金:950万円
TEL:092-714-7001
FAX:092-714-7002
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