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「ソーシャル・ビジネス」は日本を変えることができるのか(1)
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2012年7月30日 15:22

<東日本を支援するピームーシー>
0730_1.jpg ユヌス博士を招いての「ソーシャル・ビジネスフォーラム・アジア in 福岡」は、今年で2回目である。1 回目となる。昨年は、「東日本大震災被災者の自立復興支援」をテーマにプロジェクトを募り、そのうちのいくつかが実用化された。
 そのひとつが「ピームーシー・プロジェクト」である。被災した東北の女性たちにマスコットチャームを製作してもらうことで、女性の雇用を創出、心のケアの場も提供する。最近では、イタリアで開催されたチャリティ・ジャズ・セッションにおいて、ピームーシーを入場券代わりに買ってもらう、という利用例もあった。被災者支援という社会問題の改善を、マスコット製作と販売というビジネスによって促したのである。

<ソーシャル・ビジネスに期待する若者たち>
 ユヌス博士自身、ことし3月11日に東北に足を運び、ピームーシープロジェクトを始め、ソーシャル・ビジネスが実際にどこまで進んでいるかを検証した。ディスカッションも行なった。特に、ソーシャル・ビジネスを実践している企業の活動報告には、大きな関心を抱いた。
 ユヌス博士は語る。日本の、高いテクノロジー技術やビジネス力を発揮していただければ、世の中の、様々な社会問題が、解決への道を見つけることになるだろうと。そして、この「ビジネスという手法で社会問題を解決する」という点こそが、世界中の若者に希望を与えている要因なのだ。

0730_yunusu.jpg 「世界の経済システムはもはや行き詰まっている」という言葉があちらこちらでささやかれるようになった。実際、従来の、営利追及型のビジネスは、ヨーロッパでも行き詰まり、出口が見えない状態である。経済状態も、社会問題も、共に悪化しているという悲惨な状態なのだ。しかし、閉塞的な経済社会を担うことになる若者たちには、"諦め"という選択肢はない。
 ユヌス博士が提唱する「真にお金を必要としている貧困者こそ、融資の対象者だ」という言葉は、若者たちの心に素直に沁みていく。その理念に基づき、実際運営され成功を収めたマイクロ・ファイナンス「グラミン銀行」の例が、さらに若者たちを元気にする。そんな若者たちにグラミン銀行が融資できるのであれば、またとない喜びだとユヌス博士は微笑む。
 過去、ユヌス博士が行なったスピーチは、現在、高校生の英語の教科書に載っている。10代の若者たちは、ユヌス博士とグラミン銀行を良く知っている。ソーシャル・ビジネスに詳しいのは、若者たちの方なのだろう。

<ソーシャル・ビジネス企業の取り組み>
 もちろん、ソーシャル・ビジネスに興味を持つのは、若者だけではない。すでにグローバル・ビジネスを展開する営利企業のなかにも、ソーシャル・ビジネスに熱心に取組んでいる企業がある。
 「地球上で一番"ありがとう"を集めるグループになろう」という企業コンセプトに基づきCSR(社会貢献活動)に力を注ぐワタミグループは、その代表的な企業であろう。すでに発展途上国支援をはじめ、東日本大震災支援にも熱心に取り組んだ実績を持つ。その企業理念と実績に共感したユヌス博士から「バングラディシュで外食をやってほしい」との申し入れが渡邊美樹会長あてにあったのが一年前だ。その気持ちに応え、ワタミグループは2014年のオープンを目指し、準備を進めている。また、ソーシャル・ビジネスの普及にも努めようとしており、来年1月30日に行なわれる「みんなの夢AWARD3」にユヌス博士を招き、その場を通じて一気にソーシャル・ビジネスを紹介する予定だ。そして渡邊会長は、今回のフォーラムで、さらに大きなプロジェクトを発表することになる。

 また、(株)雪国まいたけは、まいたけ生産で成功を収めた大企業だ。今回は業界でも利益が上がりにくいとされている"もやし"を使ってグラミン・ファミリーと日本の企業間における最初の、そして世界初の農業に基づくソーシャル・ビジネス法人「グラミン雪国まいたけ(GYM)」を設立させた。GYM共同経営者、佐竹氏は、2年間で20回、バングラディシュを訪れた。農業を通じて現地を豊かにする、というコンセプトで、現地において8,000人以上の雇用を創出。そのうち2,000人以上の農民がマイクロ・ファイナンスを活用しているという。生産量も伸びており、後には日本でも販売するつもりだ。

<無私の心なくしてソーシャル・ビジネスはない>
 「この2社の活動は、CSRとどこが違うのか」と問う人もいることだろう。確かに、「ビジネスを目的として社会貢献すること」と「社会貢献を目的としてビジネスを行なうこと」との違いは、一見わかりにくい。ポイントは、利益を上げてどんどんと稼ごうと考えた時点でソーシャル・ビジネスではなくなってしまう、ということだろうか。あくまでも忘れてはならないのは"無私"に軸足を置いて行なうということなのだ。社会を変えたい、でも非営利法人では、資金不足などで活動に行き詰まってしまう、もっと経済的に自立しながら社会問題の解決を持続する方法はないのか、という思いを抱く人々が、ソーシャル・ビジネスの基盤を支えている。きっかけは様々であれ、動機には"社会に対する愛"があり、持続させるには"熱意"が不可欠だ。
ユヌス博士が日本におけるソーシャル・ビジネスの普及に期待するのも、震災後、無私の気持ちを持つ人々が増えている、と感じてのことだ。

(つづく)
【黒岩 理恵子】

≪ (序) | 


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