陶芸家、今村房の輔氏には葛藤があった。敷かれたレールに乗るか別の生き方を選ぶか。佐世保の三川内(みかわち)焼は平戸藩によって積極的に海外に輸出された。今でもヨーロッパに多くのファンがいる。磁器特有の透き通るような白地に青い唐子が描かれたものが良く知られる。房の輔氏は朝鮮の役で連れ帰られた初代から数えて15代目。三川内に20ほどある窯元にあって「房」を号としている。
房の輔氏は幼少より路が定められていることにとまどいを感じ高校卒業後に一時家を出る。ところが、そのことが陶芸と向き合うきっかけになった。20歳で改めて有田窯業大学校に学び少しずつ発表してきた。「フサのスケ」の作品は無地が特徴だ。「観賞用でなく作品を使って頂きたい」というこだわりがシンプルさに繋がっている。評判を聞きつけてさまざま製作依頼が届く。食器類が多いが照明器具、手洗い鉢、変わったものではドアノブといったものまである。
1971年生まれの房の輔氏は40歳を超えた。そろそろ絶頂期を迎えそうな歳だが「60歳で一人前になれるかどうか。こ世界の修行には最低でも40~50年は必要」と厳しく律する「自信を持って窯入れしても納得できるものはひとつもない」からだ。
一方で趣味だったサーフィンが創作意欲やアイデアを生み出すのに役だっている「ロクロは円運動。波も円。動と静の違いはあるが共通点は多い」
「フサのスケ」の作品は地元のクラフトショップなどでも販売するが、「いずれ海外で勝負してみたい」と先を見つめる。祖先の作品を絶賛したヨーロッパ世界で真価が問われる日を心待ちにしている。
所在地:長崎県佐世保市三川内町696
TEL:090-3463-9095
E-mail:fusanosuke@hotmail.co.jp
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