「我々の屋上緑化は、単なるスペースの有効活用だけに止まりません。子どもたちの情操教育に大きく役立つのです」と熱く語るのは、(株)栄住産業の代表取締役である宇都正行氏。同社の手がける屋上緑化・庭園は、『スカイプロムナード』の名称で住宅業界では知る人ぞ知るブランドとなっており、今や福岡を中心に全国各地からオファーが舞い込んでいる。創業より37年、独自の金属防水工法を開発し、木造住宅の常識を覆した同社の屋上緑化。37年間の紆余曲折のなかで、屋上緑化の普及に貢献し続けている秘訣をレポートする。
<「工務店のお役に立つ」、その一心>
「傾斜のある屋根でも雨漏りするのに、フラットにするなど考えられない」──と、1975年に(株)栄住産業を創業した当時は、どの工務店も拒絶反応を示したことを、創業者であり現代表の宇都正行氏は語る。「屋根をフラットにするなど、木造住宅ではあり得ないこと。タブーだ。このような工法を採用して施工したら、工務店は非難されて潰れてしまうよ」と、とくに比較的年齢の高い工務店の経営者が、異口同音に「No」を口にしたという。それでも、「将来的に必ず必要とされる」という気持ちと、「自社の金属防水は、どこに出しても誇れる技術である」という自負が宇都氏にはあった。
同社が手がけていたのは、従来の木造住宅の概念にはない、屋根の下屋箇所をバルコニーに仕立て、空間を有効活用するというもの。屋根をフラットにし、そしてバルコニーを金属防水するという工法を採択し、試行錯誤のうえに他社にない技術を構築した。そして施主が"遊び"のスペースを設けることで、より充実した住まいを創造することができる。そのような技術とサービスを持てば、地場工務店の繁栄のお役に立てるという一心で、営業活動を展開し続けた。
そのようななか、若い世代の工務店経営者はその金属防水の技術に着目し始め、支持するようになってきた。その頃より受注が出始めた。すると、実際にフラットなバルコニーを採用した木造住宅から、その高い技術に対して次々に称賛の言葉が入ってきた。同社の「フラットにする屋根」という発想が高く評価され、信頼されるようになってきたのだ。
同社の屋上緑化・庭園事業のルーツであるバルコニーの金属防水技術─現在の同社ブランドである『スカイプロムナード』は、当時は業界の常識を覆す発想であった。耐久性・防水力に優れたステンレス・鋼板に、表面保護膜加工を施し、建物の揺れなどに対応できる『オープンジョイント工法』を用いた確たる裏付けのもと、「必ずこれからの木造住宅に必要となる」と信じ、工務店を1軒ずつ丁寧に訪問した。そして、『工務店のお役に立つ』という宇都氏、そして同社の社員の信念が、木造住宅の屋根の既成概念を取り払い、新たな住空間の創造へとつながっていったのである。
事例として、日本で最初に「パッシブハウス」として認定された住宅の屋根に採用されたのが、同社の『スカイプロムナード』である。「パッシブハウス」とは、ドイツのパッシブハウス研究所が規定する性能基準を満たす認定住宅のこと。詳細は割愛するが、端的に述べると利用できる自然エネルギー(太陽・風・水・樹など)を逃さず、住宅設備を最小限に抑えることが可能な住宅であり、近い将来、住宅のスタンダードになる可能性がある。
屋根をフラットにするという発想が浸透し始めるまで、「7~8年かかった」と宇都氏は語る。一方で、このバルコニー事業は、同社にとってまだまだ序章にすぎなかった。
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<COMPANY INFORMATION>
■(株)栄住産業
代 表:宇都 正行
所在地:福岡市東区原田3-5-6
設 立:1976年2月
資本金:9,800万円
事業内容:屋上緑化、金属防水施工、太陽光発電システム設置他住設備機器販売
URL:http://www.eijyu.co.jp/
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