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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(18)
経済小説
2013年4月 2日 07:00

<経営会議(17)>
 古谷取締役は、
「私は谷野頭取の言動に注文をつけたことも、文句があるわけでもないし、さっき申しましたように、年頭に指針を出され、『対外信用力の向上、格付アップをしよう、自己資本をアップしよう、不良債権処理を額と比率とも改善しよう、企業価値の向上をしよう』ということは誠に素晴らしい経営方針だと思っています。それなのに『退任を求めるのは何故なのか。退任を求める理由を具体的に言え』とおっしゃられるわけですね。確かに今までオブラードで包んでいたのかもしれませので、ここで思い切って具体的な話しを申し上げます。
 実は今月首都圏本部で支店長会議を開きました。全部審査のことなのですが、これではやっていけないというのが全部の支店長の意見なのです。一つの例を上げると、『大阪の支店長は北九州のW支店長から審査部では通らないから2カ店取引をやめてくれ』と言われたのです。
 スプレッドがどうのこうのという問題ではないのです。協和商事のことですが。『2カ店取引では審査部が通らないから、大阪支店取引は止めてくれ』と。理由を問い質すと、『北九州地区本部なら通るから』というのです。これはもう支店長がおかしいのです。支店長がおかしいのですが、そこまで支店長を追い詰めているのです。まだW支店の支店長はやる気があるから良いと思います。現状は萎えている支店長が多いのです。
 もう一つは、4月の預金平残は3兆5,000億円です。一時は4兆円銀行と言っていたのが、意識的にホットマネーを減らしたと言い訳をしていますが、少なくとも近隣の銀行で預金が減ったのは当行以外では西日本銀行だけです。今営業は縮小均衡しており、残念ながらこの体制でいくと、あの中期計画は達成できないと私は思っています。ですからこの際任期満了ですから、別に解任しようと思ってしているわけではないのですが、新しい体制でやりたいと思っているわけです」
と弁明した。

 その話を聞いた石野は、
「言われる趣旨はわかるけれども、そういうことがあるのなら、先ほど大沢監査役が言われるように毎月の経営会議、取締役会、あるいは個別ででも意見を具申することが取締役の役目ではないですか」
 と問うと、古谷は、
「いや、だから取締役として、取締役会で私は一度、スプレッド貸しのペースレートが30ベイシスで良いのかどうか申し上げたことがありますが、審査部の厳しい姿勢が谷野頭取の耳に入っていないわけはないと思います。谷野頭取ははっきり、『梅原取締役なり、審査部が自分の意を体しているだけだ』と言ってらっしゃいましたから、これは谷野頭取のお考えなのだなと言うふうに我々は思っています。『縮小均衡やむなし』と思われているのだろうと思います。言葉では縮小均衡ではないとおっしゃいましたけれども」
 と、谷野の経営を批判する言葉を口にした。
 北九州本部長である石野は、
「そういうことはもっと前に言って、お互いに議論しないといけないですよ。それをせずに解任のようなことをするということはみっともないことです」
 と述べ、古谷が自分の耳に届いていないW支店の話を持ち出したことに不快感を示した。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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