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地域づくりにマーケティング発想を!(8)九州各地の地域づくり2~松浦市の挑戦
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2010年9月23日 08:00

 松浦市の挑戦について以下に述べますが、その前に読者の皆さんへお尋ねします。「松浦市は何県にあるでしょう?」
 筆者は、2006年度に策定された「地域ブランド化による新・松浦市の地域活性化計画」(財団法人 九州地域産業活性化センター)検討にあたって、同年9月にネットリサーチを行なったのですが、なんと長崎県居住者の55%が松浦市が長崎県にあることを「知らない」と回答し、逆に佐賀県居住者では、81%が「知っている」(正解)としていたのです。この結果に松浦市関係者は愕然としました。圧倒的な知名度不足、理解度不足です。これに先立つ同年1月、松浦市は長崎県東部に位置し伊万里湾口に浮かぶ2つの島(鷹島町、福島町)と新設合併を行ない、新「松浦市」となりました。このうち鷹島町は合併に際し、「交流人口増加に対応する 鷹島町観光振興計画」(05年12月)を策定し、新市に引き継ぐよう要望しました。
 鷹島は、ご存じの方も多いと思いますが、鎌倉時代の元寇の舞台であり、神風が吹いた島の南側には元軍の遺物が多数沈んでいます。これにちなんで島にはモンゴル村が建設されており、小中学生を対象にモンゴル村と体験漁業をセットにした体験観光を売り物にしていました。しかし、当時の鷹島は橋が架かっていない孤島であり、本土との交通はフェリーに頼るのみでした。そのような島に2,800人が暮らしていたのですが、この不便を解消するために島民は以前から架橋を希望していたのです。島民の夢が実現したのが、09年4月の「鷹島肥前大橋」(佐賀県唐津市:旧肥前町~鷹島間5.0㎞)の完成です。
 「観光振興計画」は、架橋を契機として島を観光で活性化させ、市の中心部から離れた場所に立地するハンディを克服し、町民に希望を与えようとするものでした。筆者はこの計画策定にもかかわっていますので、その後も含めてこの間の事情を記します。架橋を機に観光振興を図るにあたって、観光の目玉が必要になります。鷹島にはモンゴル村があり温泉も出ており、立ち寄り湯としての活用が考えられました。しかし、モンゴル村の宿泊施設、モンゴル式「ゲル」は木のベッドで老朽化しており、子どもたちの宿泊には良いのですが大人の宿泊には耐えられません。ゲルの改修には費用がかかります。また、ここに宿泊施設を新たに建設することも考えられましたが、これも莫大な費用がかかります。
 そこで目をつけたのが、農水産物の直売所です。これを「道の駅」として国と一体的に整備すれば応分の負担で済みますし、これまでお話ししましたように、農水産物直売所という消費の時流に乗った施設になります。幸い、鷹島側の橋の付け根に最適な用地が確保できる見通しが立ちました。そこで観光振興計画では、橋の完成時にあわせて農水産物直売所(道の駅)を完成、オープンさせることとし、その展開内容を提案しております。また、架橋、道の駅完成を条件として観光入込客数の推計を行なっています。その予測は、オープン時の09年度から10年度、11年度とほぼ30~40万人に達するとし、現状の12万人から3~4倍の入込客数を見込みました。こうして鷹島道の駅「鷹ら島」は、09年4月に無事オープンしました。
 さて、その実績です。09年度の入込客数は、道の駅レジ通過客数からの推計で77万2,000人となり、予測の倍以上という嬉しい悲鳴をあげる状況でした。ただし、本年度は8月までで19万7,000人と対前年度比マイナス50%となっており、通年ではほぼ予測通りの数値になろうとしております。松浦市では、この鷹島の架橋効果、道の駅開業効果により観光客は飛躍的に増えたのですが、先に述べたように市の知名度の低さは致命的です。
 そこで松浦市では、知名度アップのための戦略を多面的に展開します。そのひとつが、08年8月に策定した「福岡都市圏交流促進基本計画」です。このプロジェクトのひとつに「勝利」を呼び込む島、「鷹島」PRプロジェクトがあります。このプロジェクトの目的は、福岡ソフトバンクホークスとの関係(スポンサー契約その他)を構築し、鷹島を切り口として「松浦市」の全体的な知名度のアップを図り、交流人口の拡大を図るところにあります。
 実は、このプロジェクトの前提が観光振興計画において提案されています。福岡都市圏とのスポーツ交流、具体的には「ホークスアイランド」の訴求を行なうべきだとの提案です。「ホークスアイランド」というネーミングも筆者の提案です。そして、これを実現したものが先の「鷹島」PRプロジェクトになります。
 もとより、松浦市の観光客のターゲットは福岡市およびその周辺都市に定めており、その福岡市にソフトバンクホークスが本拠を置いているのはご承知の通りです。鷹=ホークスつながりというわけです。松浦市のサイトをみていただくとわかりますが、「勝利の道は鷹島に通ず」と、ホークスを意識したキャッチコピーが使われています。松浦市の知名度不足改善のための戦略ですが、道の駅「鷹ら島」がマスコミに取り上げられることと相まって、ホークスプロジェクトも松浦市の知名度向上に寄与することと思われます。

(つづく)

(株)地域マーケティング研究所
吉田潔氏代表取締役 吉田 潔
福岡市中央区天神4-9-10 正友ビル5F
TEL:092-713-2121
URL:http://www.mrkt.jp/


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