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直撃インタビュー

気鋭のジャーナリスト・上杉隆氏が語る2011年の日本(5)
直撃インタビュー
2011年1月 1日 08:00

不自由の鎖につながれた日本 立ち遅れている政治とメディア

<ジャーナリズムとは 意味なき選挙予想>

 ―上杉さんが考えられる「ジャーナリズムとは何か」というのをお聞きしたいと思います。ちなみに、佐々木俊尚さんは「権力監視も重要だけれども、多くの情報を整理して分かりやすく世間に伝えるのが大事」と述べています。

上杉 隆氏 上杉 同感ですが、佐々木さんが言っているのは、世界中のジャーナリズムがすでに実践していることですから、別に個人の考え方というわけでもないでしょう。ただ、少なくとも日本はやっていない。それはメディアとジャーナリズムをごちゃ混ぜに論じているからです。

 ちなみに、世界中のジャーナリストの考える最低限の仕事は「権力監視」です。これはどの国に行ってもそうです。

 基本的には政治、行政、巨大企業などの隠す情報を暴くとか、権力の不正をチェックするとか、そうしたことが求められているのがジャーナリズムです。これは古くからそうで、17世紀の英国や18世紀のフランスではすでにそうした考えがありました。ワシントンポストでウォーターゲート事件を扱ったカール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの上司に当たるベン・ブラッドリーも、やはり「最低限の仕事は権力監視だ」と言っています。それは世界のジャーナリストの共通認識です。

 情報を加工して整理するのはメディアの仕事でもありますがどちらかといえばワイヤーサービスの部類で、本来のジャーナリズムとは違います。主観を入れて検証し報じることが新聞などのジャーナリズムです。主観が不要ならば、それは通信社がやれば良いことです。

 たとえば選挙報道で、どの候補がどのような政策で過去どういうことを実践して、実現可能性はどうかということを検証したうえで、我々はこの候補を応援すると事前に公言するのもジャーナリズムなのです。

 それが世界中で不断に行われているわけで、日本だけが客観報道と称しながら競馬の予想みたいなバカなことをやっているのです。そんなのは客観報道でも何でもありません。その辺をまったく取り違えていますよね、

 元政治家秘書という立場からすると、マスメディアの予想に対しては「あほらし」という気持ちです。実際に選挙した人間はわかるのですが、選挙はやってみるまで結果は分からないのですから。選挙予測なんてものはまったく無意味です。あんなにくだらないことに労力を使って、しかも報道の質を落としている。そんな意味のないことをするくらいなら、選挙区をひとつでも歩いた方がずっとマシです。

(つづく)

【大根田 康介】

<プロフィール>
上杉 隆(うえすぎ たかし)
上杉 隆(うえすぎ たかし)1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。 政治、メディア、ゴルフなどを中心に活躍中。著書に『上杉隆の40字で答えなさい』(大和書房) 『結果を求めない生き方』(アスコム) 『記者クラブ崩壊』(小学館) 『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎) 『官邸崩壊』(新潮社)など多数。 ツイッターアカウント @uesugitakashi

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