中村 宗像市は何だか行政がやさしいですね。そこが良いなぁと思います。
谷井 工場誘致などで活性化を図っている自治体も多いですが、宗像は自然や環境を活かそうしているから、そう感じていただけるんですかね。
中村 私が言うことでもないんでしょうが、工場誘致に目が向きがちですが、そのやさしさを突っ張ってほしいですね。
谷井 それは私も中村さんと同じ気持ちです。
中村 そこで話が変わりますが、東日本大震災以来、各地域の「地域力」が求められているし、試されているときだと思います。
谷井 先ほどから宗像ブランドと言っておりますが、そういう地域の力と言いますか、もともとの資源があるわけです。あとは地元学、宗像学を発信していきたいと思います。地域力の源は市民です。なかでも、ボランティアやコミュニティ協議会などが核になります。それぞれの地域が持っている力を住民たちの手で活かし、それを行政が指導・調整していく。これは行政だけがやっても成果がでません。
中村 さあ、そこで問題なのが人口構成です。15歳未満と30代が少なくなり、60歳以上が増えていくなかで、どこに地域力を見出そうとしていますか。
谷井 やはり宗像は"住むまち"です。政令市周辺の人たちに良さを知ってもらって、住んでみたいと思っていただける情報発信が必要です。
中村 それなら「癒しのまち」みたいなフレーズでいいんですか。
谷井 そうですね。「癒しのまち」「住んでみたいまち」です。最初に戻りますが、合併の効果というのはここに行きつきますね。ミックスして相乗効果を出す。合併していないとバラバラでした。
あと1つ、合併効果があります。それは行政の効率化です。施設や職員をずいぶん合理化できました。
中村 昔は行政というものは、必ず自分のところにハコモノをつくっていった。そのバカバカしさを解決できたというわけですね。
谷井 その通りです。財政が豊かなときは良かったのでしょうが、こういう時代になると何事も効率的に考える必要があります。
中村 合併という新しい息吹を感じながら、そこの行政に携わる人が昔ながらのノウハウしか知らなかったら意味がないと思うんですよね。そういう意味で、合併という革命が起こったとき、政治家の資質も求められます。
谷井 我々は九州で一番早く合併しました。やはり変わらないといけません。合併というのは古いしがらみを壊せるんですよ。1つは補助金の問題がありますが、これを廃止しようとしたらものすごい抵抗があります。しかし、合併したときに新しい感覚を入れていきましたから抵抗もなかったわけです。
中村 そういった意味では、自然など財産は変えず心は近代化していく、こういうことですね。博多なんかと同じようなまちをつくってほしくないですね。歴史も文化も資源も違うわけですから。そうすると、「柔らかいまち」というフレーズが一番ピッタリくるかもしれません。
谷井 たしかに。「柔らかい」はいいフレーズですね。
【文・構成:大根田 康介】
≪ (4) |
<プロフィール>
谷井 博美(たにい ひろみ)
1940年愛知県名古屋市生まれ。幼少より熊本で育つ。63年熊本大学法文学部を卒業し、福岡県庁に入庁後、福岡県鞍手福祉事務所に勤める。88年県立小倉高等技術専門校長に就任。89年県環境保全施設計画室長、92年、県農政部副理事兼農政課長、94年県企画振興部空港対策長、96年企画振興部長と、県の要職を歴任。99年に福岡県庁を退職し、空港周辺整備機構福岡空港事業本部理事に就任。01年宗像市助役、03年からは新宗像市助役を務める。06年宗像市長に就任。10年、市長選に当選し2期目を務める。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら