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トリアス久山物語『夢の始終』(40)~トリアス受難
経済小説
2011年10月 4日 07:00

<トリアス受難>

 そして、プロパティマネジャーとなった株式会社トリアスによるショッピングセンターの運営は、その懸命な努力にもかかわらず実を結ぶことがなかった。

またトリアスは新たな時代に... もちろん、株式会社トリアスがまったく無策だったわけではない。
 10年経過にともなうコストコとの契約更新を実現させた。いくつかの新規テナントも導入した。ゾーンによっては大規模なリニューアルも行なった。必死の努力をしていたといってもいいだろう。
 しかし、ショッピングセンター運営のプロを欠く体制で十分な成果を上げられず、空き区画にとりあえずテナントを入れた、というような状態だった。

 その上、マーチャンダイジング計画に基づくリーシングといった問題以前に、集客施設の最低限の条件であるセキュリティやクリンリネスができていなかった。

 セキュリティ面では、夜間の駐車場の照度不足は女性客にとって治安面の不安をもたらした。また、県道から駐車場に入りやすいのはいいが、夜間に大型ダンプカーなどが侵入し、休憩場所として使われていた。

 そしてクリンリネス面ではトイレ廻りの清掃不徹底、場内の自動販売機に付帯するゴミ箱の汚れ・破損などである。さらに開業後数年を経たことで、街灯に掲げられたフラッグが色褪せ擦り切れて、いかにも落ちぶれた雰囲気をかもしていた。それに場内の看板やサインボードには、途中から変更したロゴマークが混在してイメージが雑然としていた。植栽を多く取り入れたオープンモールのレイアウトはトリアスの魅力だったが、これも手入れ不足で至るところに雑草が茂っていた。

 ショッピングセンターとしてのトリアスは、このように厳しい状況だった。
 が、04年以降の不動産ファンドブームで商業不動産の価格が上昇に転じた。これはジェイウィルパートナーズにとっては出口(売却による投資終了)に至るまたとないチャンスであった。
 08年8月、奇しくもリーマンショックの直前だったが、アメリカ系の不動産ファンドであるラサールインベストメントは、トリアスの買収を発表、またトリアスは新たな時代に突入することになった。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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