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トリアス久山物語『夢の始終』(42)~デベロッパーがPM会社に変わるとき
経済小説
2011年10月 6日 07:00

<デベロッパーがPM会社に変わるとき>

 もともとデベロッパーであったプロパティマネジャーが、ファンド側が期待する成果を上げられない問題は、トリアスに限ったことではない。

 不動産を証券化した後も、PM会社に衣替えして、そのショッピングセンターの運営を続ける、という図式は美しい。しかし、ショッピングセンターを所有し、運営する会社は、どちらかといえば不動産業の家主としての立場に安住し、そこにはどちらといえば緩い社風が醸成されがちである。だから、最初から資産の裏づけなくPMだけでやってきた会社のようにフットワークのいい仕事ができないのだ。

 福岡市中央区のホークスタウンモールは、もともとダイエーの子会社である株式会社ホークスタウンが、広義のホークスタウン、つまりドーム・シーホーク・モールの3施設を所有し、運営していた。この状態で、株式会社ホークスタウンの株式がアメリカのファンドであるコロニーキャピタルに買収された。この段階では、不動産は会社ごと買収されたが、所有と運営の一致、というスキームは動かなかった。

 その後、コロニーは、シンガポールの政府系ファンドであるGICにホークスタウンを転売した。
 これにともない、不動産としてのホークスタウンは、GICの所有物となった。一方で、会社としてのホークスタウンは不動産の所有者としての立場を失い、不動産の運営を請け負うプロパティマネジャーの立場となった。これは、トリアスの証券化時とまったく同じである。

 そして、ホークスタウンの3施設を別々に見てみると、ドームはソフトバンクが長期間の賃貸借契約を締結しているのでまったく問題なかった。
 シーホークは株式会社ホークスタウンが営業しており業績は悪かったが、かといって現下の経済情勢ではシーホークを借り上げて営業するような主体が現れることは考えずらかったので、やむを得ず、これを続けることとしていた。

 問題は、ドーム前の商業施設であるホークスタウンモールである。

ハードロックカフェ 2000年にホークスタウンモールが開業したときは、主にダイエーのデベロッパー部門でリーシングに当たってきた人材がテナント誘致活動を行なった。
 当時は景況の厳しさに加え、ダイエー本体の存続すら危ぶまれた時期であったためホークスタウンモールのリーシングも簡単にはいかなかった。賃貸借契約の敷金の預入にも、各テナントとも疑念を示したほどである。しかし、それでも目玉テナントとしてユナイテッドシネマ、ZEPP FUKUOKA、ハードロックカフェなどを取り込むことに成功して、かつての流通の王者として気を吐いたものだ。

 しかし、高塚体制を経てコロニー体制と経営が変わるとともに、ドーム・ホテルの本業の経営への注力が必要となり、テナントリーシングなど不要不急の分野への経費支出が止められてしまい、人材も散逸してしまった。
 コロニー体制になり、ファンド側のトップダウンで温浴施設、フットサル場などからなる2期工事も行なわれた。しかし、この時にはかつてのリーシング力は失われており、いいテナントが集まらず、目玉の温浴施設も結局直営での開業となってしまった。
 そういう状態で、株式会社ホークスタウンは、不動産所有会社からPM会社に衣替えすることとなった。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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