<戦場と学校を一緒にする呆れた報道>
4月に入り、毎日新聞は、米軍普天間基地に隣接する宜野湾市立普天間第2小学校の米軍機騒音問題をたびたび取り上げている。
2日、7日は1面で。8日にはオピニオン欄で「授業かき乱す『戦場の音』」という見出しを付けて、「入り乱れるヘリと航空機の爆音のなかで、ふとアフガンニスタンの戦場風景を思い出す。2年前の春、米軍に従軍取材した。砂ぼこりを上げて上昇し、旋回する米軍機。あの乾いた『戦場の音』だ」とまで述べている。13日にもコラム『記者の目』で大々的に扱い、「もうこれ以上、子どもたちを犠牲にするな」と主張している。
普天間基地を離発着する米軍機の騒音で、授業が中断し、第2小学校の子どもたちの教育に支障をきたしている。あるいは、平成16年(2004)に起きた沖縄国際大学へのヘリ墜落事故を例にあげ、墜落の危険性を繰り返し強調している。
一連の記事は、いずれも大治朋子編集委員の署名入りの記事だ。第2小学校の騒音問題や墜落事故の危険性については、今に始まった話ではないのに、なぜ、この時期に1面やオピニオン欄で大きく取り上げる必要があるのか、甚だ疑問に感じる。
<伊波氏の責任をなぜ追及しないのか>
軍用空港と民間空港との違いはあるが、伊丹空港、福岡空港も同じように住宅密集地のなかに空港が存在する。そばには学校や病院もある。1日の離発着回数は両空港とも普天基地よりもはるかに多く、墜落事故の可能性も普天間基地よりはるかに確率は高い。
そもそも第2小学校については、騒音もなく、安全に子どもたちが教育を受けることができるように、移転の話が何度も俎上にあがりながら、潰されてきた経緯がある。
宜野湾市長選挙が平成24年(2012)2月12日に行なわれ、佐喜真淳氏が現職の伊波洋一氏を900票差で破り約26年ぶりに保守系の市長が誕生したが、伊波氏は従来から普天間基地を対米闘争拠点として温存し、逆に基地の固定化を目論んでいた人物の急先鋒であった。
伊波氏は、移転すれば基地に反対する材料が減ると考え、口では第2小学校の危険性を声高に叫びながら、子どもたちを人質にとって政治的に利用してきたのである。
このことは宜野湾市では公然の秘密となっているにもかかわらず、大治編集委員は、伊波氏の責任論にはまったく記事のなかでは触れていない。
単に現状固定化状態での普天間基地の騒音問題を強調するだけでは、女性特有の情緒的な「戦争反対・反基地」の態度と同じではないのか。まったくマスコミとしての責任を果たしていない報道姿勢である。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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