<初の民間人登用>
野田佳彦首相は6月4日に行なった内閣改造で、防衛相に拓殖大学大学院教授の森本敏教授を充てた。民間からの起用は、防衛庁時代(防衛庁長官)を含めて初めてとなる。
森本氏は2代続いて、素人大臣と言われた一川保夫、田中直紀氏とは違って、日本の外交・安全保障に詳しい人物であり、期待は大きい。
共同通信社が4、5日に実施した全国緊急電話世論調査でも、森本氏起用を評価すると回答した人が6割を超えている。
<与野党からの批判は論外>
森本氏の防衛相起用に対して、与野党から批判の声があがっている。
自民党の石破茂元防衛相は「民主主義的な文民統制のもとでは防衛省・自衛隊のトップは政治家がやるべきだ」と指摘している。
鳩山由紀夫元首相は文民統制(シビリアンコントロール)上の疑義があると懸念を示し、「ミサイルのスイッチを入れる権限を有する方が選挙の洗礼を経ない方でよいのか」と批判した。
日本国憲法66条は、首相と閣僚は「文民でなければならない」と規定している。では「文民」とは、どのような立場なのか。1953(昭和28)年の衆議院外務委員会で佐藤達夫法制局長官(当時)が「過去に職業軍人」ではなく、「軍国主義に深く染まった人」ではない人物と答弁している。
森本氏は元自衛官であるが、政府は「過去に自衛官でも現在、自衛隊を離れて自衛官の職務を行なっていない以上『文民』にあたる」としている。
自衛官出身の前例としてはすでに、小泉政権下で中谷元衆議員議員が防衛庁長官を経験している。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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