<海外では常識、民間からの登用>
森本氏が選挙の洗礼を受けていないことも、文民統制とは直接は関係がない。米国の国防長官の多くは民間の出身で、軍歴はあっても議員経験のない人も少なからずいる。
クリントン政権で国防長官を務めたペリー氏は、森本氏と同じ研究者(学者)出身であり、ブッシュ、オバマ両政権で国防長官だったゲーツ氏は米中央情報局(CIA)の分析官だった。軍の総指揮権は大統領が持っており、その指揮監督下で国防長官が軍を統括することになっている。
自衛隊の最高責任者が首相である日本でも仕組みは同じであり、何の問題もないはずである。
<外交・安全保障政策の回復を>
森本氏は、沖縄の米軍普天間基地移設問題で、日米合意に基づく名護市辺野古沖への移設案を「最善」として、一貫して支持してきた。就任記者会見でも「沖縄の人々の理解を得ながら、普天間基地問題を前進させたい」と述べている。
また、集団的自衛権の行使についても、一貫して「権利として当然」だと主張してきた。
森本氏は、自らの重責を「国会議員ではないハンディを背負いながら防衛の仕事に専念したい」と述べているが、外交・安全保障の専門家としての知見をいまこそ生かすときだ。
6月12日の衆議院予算委員会では、官僚の用意した答弁書を使わず、自分の言葉で質問者に対して答弁するなど、早速、外交・安全保障の専門家としての片鱗を現している。
民主党政権によって停滞した日本の外交・安全保障の立て直しに全力で取り組むことこそが、民間から防衛相に就任した森本氏に課せられた最大の使命なのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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