【ネクスト・キャピタル・パートナーズは不動産屋と同様の企業転がし屋】（前）

＜さとうベネック歴史的なおさらい＞
　1938年10月に故佐藤肇氏が佐藤組を創業する。もともと大分の梅林建設の下請けを行なっていたことで、この佐藤組は｢梅林を追い越せ｣とう風土が培われてきた。47年に株式会社へ組織変更した。72年４月に２代目社長に佐藤諄之助氏が就任する。この時に東京本部体制を敷く。このあたりから躍進の基礎ができる。75年入社組に言わせると｢毎年、売上が伸びて忙しかった｣と当時を懐かしむ。

　それからバブル弾ける92に年までは受注は急増していく。不動産開発からマンション建設まで幅広く手がけてピーク時は96年６月期には766億円を誇った（グループ1,000億円を目指していた）。九州地区では松尾建設に次ぐ規模まで躍進した。98年にさとうベネックに商号を変更した。98年には本社屋を落成。2001年には執行役員制度を導入したが、同年９月には早期退職制度を導入し、75名が退職した。

　この時点で経営の行き詰まりが表面化していた。（１）公共事業の激減（２）リーゾート開発や不動産投資の失敗などから財務状況は極端に悪化していた。その下り坂を疾走する事態のなかで３代目社長に佐藤恭司氏が就任したのである。可哀そうにこの２代目は３年で退任した。05年３月に財務改善の名目に金融支援が敷かれた。その責任を取って佐藤一族は放逐されたのである。ここまではメインバンクの大分銀行はよく支援をしてきた。

　ところがだ。06年６月期360億円の完工高があり黒字になるとみられていた。
　しかし、不運の底は深い。建設中の病院の火災などで予想しなかった赤字を生ずる破目となった。｢従来金融支援で限界がある｣と判断されて大分県中小企業再生支援協議会の支援を得て、産業再生法の申請を行なった。その流れで、06年８月に主要取金融機関16行に対して債務免除などの金融支援を要請した。

　この支援スキームは整理回収機構（RCC）が調整役として関与してスポンサーの選定や負担額の調整を行なうことである。民事再生法の申請をすれば一般債権者にも打撃を与えるということで金融機関の被りだけに留める再生の道を選んだ。スポンサー選定の過程でネクスト・キャピタル・パートナーズがスポンサーに選定された。

　ネクスト・キャピタル・パートナーズ（今後Ｎ社と呼ぶ）の立石寿雄社長は1958年４月生まれ・下関市出身・東大卒で東京銀行に入社している。東京銀行は三菱銀行に吸収される形で合併した。吸収される側にいたバンカー立石氏のビジネス人生の変遷が始まる。コンサル会社などを転々として産業再生機構が設立されるとスカウトされて入社する。ここで同機構の高木新二郎氏から薫陶を受ける。

　2005年11月にＮ社を立ち上げることになる。当時はまさしく企業再生のブームの真っ盛りの時期であった。地方金融機関のレベルでは「企業再生とは何？」という時代であったから大分銀行などが主導権を握ってさとうベネックの再生を手がけることは無理であった（現時点では何も難しいノウハウが必要でなかったことが認識されだした）。いうならば企業再生ビジネスは「間隙ビジネス」である。07年１月にＮ社が選ばれたのは産業再生機構にいた経歴が幸いしたのであろう。結構、人脈が通用する世界だ。また指摘した『間隙』を抜いてさとうベネックのスポンサーを勝ち取ったのである

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