今回の那珂川町長選挙で疑問に思うことがある。告示日が8月14日、投票日が8月19日と、選挙期間が5日間と短い選挙期間であるにもかかわらず、14、15日とお盆期間が含まれていることだ。全国でお盆期間中に告示する例がこれまであっただろうか。記者がインターネットなどで調べた限りでは見当たらなかった。
お盆期間中は、墓参りをするために里帰りする家庭も多い。期日前投票に影響が出る。また、お盆期間は先祖の霊を静かに迎える時である。立候補者が拡声器を使って回れば、墓参りの迷惑になることは必至だ。
投票率の上下によって選挙結果は大きく左右される。投票率を上げるためには、選挙にあまり関心がない層が投票所に足を運ばなければならない。新興勢力が勝つには、投票率を上げて浮動票を取り込むことが必要条件であり、組織票を固めて当選をねらう勢力にとっては、むしろ投票率は上がらないほうが良いとも言われている。つまり、無関心層の関心をいかに高めるかが新興勢力に求められる。活動内容も重要だが、当然ながら、それを普及するためには相応の時間が求められる。
投票率が上がるよう有権者に呼びかけるのは選挙管理委員会の重要な役割のひとつ。お盆を告示日とした那珂川町選挙管理委員会は、はたして投票率への影響についてどうのように考えたのだろうか。なお、公職選挙法には、地方自治体の長の任期満了にともなう選挙の場合、任期が終わる日の30日以内に行なうことが定められている。
また、同町選挙管理委員会規定では、同町選挙管理委員会事務局の書記長を町長事務部局総務課長が兼任するとなっている。現職の町長が再選を目指す場合、側近である総務課長が選挙管理委員会事務局の書記長を兼任するのはいささか公正を欠くような感じがする。しかし、選挙管理委員会で議論した結果、告示日を8月14日と決めたのであれば手続き的には問題はない。その決定に問題性を感じるにしても、現行の制度ではこのようなことが可能であるのだ。
お盆シーズンが選挙期間に含まれることは、とくに那珂川町長選挙の投票率に多分に影響をおよぼすと言えるだろう。なぜならば、同町は人口の8割が町外からの転入者という"ベッドタウン"特性を考えると、お盆シーズンに同町を離れる世帯が相当数いることが容易に想像できるからだ。町民にとっては自分たちが住む町の未来を考える上で貴重な機会と言える町長選挙。町民に対して、同期間を設定したことについての説明責任があるように感じる。
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